キティホーク@小樽前哨戦

F-15 2WG/203SQ No.02-8921

空母キティホークが7月1日、小樽に寄港して一般公開を行うというので、ヒコーキを搭載した状態で撮れるのはこれが最後かもしれないと、前日泊まりで迎撃に行って来た。
観光ではないので、行きも帰りもスカイマークの格安宿泊パックで、時間も昼近く、2泊3日とはいえ一日まるまる使えるのは中日、一般公開の日しかない。行きは羽田1005発の709便、レジスターJA767Eの767である。平日の中途半端な時間だけに機内はガラガラ、隣も空席で窓側の展望を楽しませてもらった。東京を起った時はどんよりとした梅雨空だったが、幸い視程は良く、下界も良く見える。尻屋崎の上空を飛び函館を左下に望みながら、一度北に出て旋回しR/W19Lに無事着陸。
今回のツアーは参加者3人で、1人は別の所から来て千歳集合のため、先着組で一度レンタカーを借りに行き(格安のため車庫が空港から離れたところにあり、マイクロバスでの送迎となる)、1時間ちょっと待ち合わせ時間があるので、千歳エンドでイーグルでも撮ろうか、ということに。

明日の本番前に軽〜くミリオタウオ−ムアップ、というわけでもないが、行きがけの駄賃でイーグルが撮れればめっけもん、と軽い気持ちで行ったのだが、マイクロバスの車中、レンタカーの手続きをして空港に戻ってくる最中に降りてくること降りてくること・・・その数15機ほどにもなろうか。実は私、千歳に昼間に着いたり出発したりしたことがない。それも道理で、旅行なら有効時間帯の便を選べば帰りは夜になってしまうし、東京から朝来てもたいがいベタ曇りだったり、通路側だったりして、一度も上空から見たことがないのだ。今回、初めて「あっ!千歳の基地の方はこうなってんのか〜」とその位置関係に納得。

また、旅行なら大体が夏休みだったり土日なので、今まで戦闘機の姿も見たことがない。今まで「ここ、本当に基地なのか?」とちょっと半信半疑だったのだ。本日は降りてくるときにエプロンに並んでいるのも見えたし、何よりガンガン飛んでいる。急いで戻ってきたとき、南千歳の駅手前、千歳線と平行している場所で真上を降りていったのに大興奮、しかしそろそろ降りる機体も尽きる頃、エンドに着いたら静かになってしまうのではないか・・・と不安で仕方がない。
初めてゆえ、撮影ポイントもわからず、北側(本日のアプローチ側)は車を停める場所がないらしいので、これから上がる機体があれば・・・と南に行き、結局上がりは撮れなかったが、なんとか降りてデアーミングを行うシーンを撮ることができた。まあ、幸先のいいスタートで・・・

我々がエンドに着いてから降りてきたのは3機、すべて地元千歳の203飛行隊の機体で、1機目は手前のタキシーウェイでさっさと曲がってしまい、我々の前を通ってはくれなかったが、921とこの832が目の前を通過していった。自衛隊の西方シフトが指摘されるようになって久しいが、北の守り、ここ千歳配備の機体はイーグルの中でも比較的新しい製造分で、MSIPと呼ばれる多段階改良計画に基づく改良が施されている機体が多いが、この832号機はF-15J通算32号機と比較的古いグループに属する。

結局、イーグルの上がりは1機も撮れなかったが、C-1(飛行隊不明)とT-4(同)、U-125A(千歳救難隊)の離陸を見ることができた。

地元の方の話によれば、金曜の午後にしては比較的良く飛んでいるとのことだったが、ここでタイムアウト、別の所からいらした同行の方が着陸したと連絡がきたので、再び空港に戻る。
本日の予定としては、明日のキティの入港を撮るためのロケハンだけなのだが、ここまで来たら余市余市防備隊・第1ミサイル艇隊のミサイル艇1号型を見ていこう、ということになり、すでに巡視船でいっぱいの小樽港内を横目に見て一路余市へ。

小樽から函館本線に沿って国道5号を東進すること約20km、ウイスキーで有名な小さな漁港町、余市の片隅に、ひっそりと余市防備隊が駐留している。これが本当に港の一角に申し訳なさそうに立地して、とても海自の基地とは思えない牧歌的な風景。こんな部隊があったもんだね〜。小さな桟橋が1本あるだけで、3隻在籍するミサイル艇1号型のPG821・PG822が停泊している。訪問時、3号艇となるPG823は留守だった。

大湊地方隊の各部隊はいずれもなかなかに交通の不便なところに位置しており、所属各艦・艇は地方隊主催の体験航海にでも行かないと見られない珍品揃いだが、このミサイル艇1号型はその中でも極めつけ、私も初見となる。基準排水量はわずか50t、海自の現用戦闘艦艇のなかでは最小サイズ、明日見るキティとはセントバーナードとチワワ以上の大きさの違いである。その外形からわかるとおり、水中翼船のため、航洋性も高くないので、あまり遠くまで足を伸ばせず、観艦式や関東地方の体験航海ではまず見ることができない。これが千載一遇のチャンスとガシガシ写真を撮りまくる。

いわゆる全没水ハイドロフォイル形の船体のため、停泊時・低速時は水中翼を折り畳み水の上に跳ね上げているのがわかる。高速航行時にはこれを水中に展開し、4,000馬力を発揮するIHIのLM500ガスタービン1基により46ktの高速力を誇る。これは公称では現在海自在籍艦艇のうちで最高速力となる。武装は艦尾に背負い式に装備されたSSM-1B(90式艦対艦誘導弾)4発と、20mm多銃身機銃1基。
実は、「あまり遠くまで足を伸ばせ」ないのはもう一つ、大きな理由があるのだが、このフネについてはいろいろと興味深い点がありますので、また日を改めてじっくり解説したいと思います。
余市防備隊は隣の造船所がちょっと「トワイライトゾーン」系で興味深かったり、そのロケーションに絶句しつつも楽しんできたのだが、本題である明日のロケハンのために、明るいうちに小樽に戻らなければならず、切りのいい所でうしろ髪を引かれながら国道5号を戻る。いや〜、本題の前にイーグルは見るはミサイル艇は見るは、実は千歳から高速に乗って走っている道中、インターからすぐの所で交差した下の道に74式戦車が走っているのも発見してしまった。これですでに陸海空制覇・・・なんか期せずして自衛隊めぐりになってるぞ・・・私を含め乗り物オールラウンダーの一行としては、北の国のあまり歓待ぶりに早くもカードの容量が持つかとの心配も。

今回の入港にあたっては、当初は一般公開はなしということだったので、入港シ−ンだけでも撮れれば、ということで話に乗ったのだが、小樽市が入港は容認できないとの建前から一般公開を認めないとの姿勢をとっていたのに対し、札幌市と小樽市の商工会議所が独自に歓迎委員会なるものを組織し、こちらが主催となって一般公開されることに急遽決定、慌てて往復はがきを買って申し込んだのだ。小樽に空母は1997年のインディペンデンス、2000年のキティと過去2回寄港しているが、特に97年の初寄港の際は大勢の見物客が押し寄せ大混乱となったので、今回は911後のセキュリティ対策もあり、事前申し込みした者だけの乗艦といういう方式にしたのだろうが、特に人数限定で抽選というわけではなく、申し込めば全員に返送されて来るらしい。ロケハンでキティが接岸する勝納(かつないと読む)埠頭に行ってみたが、岸壁への出入口の所にはこんな看板を掲げたプレハブが。

昨年12月のSLクリスマス号乗車記に書いたように、小樽には何度も来たことはあるが、実は初めて訪れたのは97年のインディ初寄港の時で、小樽に空母に乗りに来るのは2度目になる。あの時と同じ勝納埠頭接岸で、裕次郎記念館やマイカルから名前が変わったが小樽築港駅前のショッピングセンターも当時の記憶のままなのだが、前回はスケジュール上、入港の撮影など思いも寄らなかったので、地図とにらめっこし、市街の東側、小樽築港駅よりさらに東に行った海沿いで迎撃との結論に至ったのだが、それでもまだ検討を尽くしていなかったのが翌朝に明らかになる・・・
いずれにしても、入港予定時刻のかなり前にオンステーションをする必要があり、明日は0500起床ということで、駅にほど近い居酒屋でいい調子でフネ趣味業界裏話などしながら、運河近くの公共の宿に戻ってきた。窓を開ければ目の前には港内が見える。昼間もあちこちに見えた巡視船群だが、深夜になってもサーチライトの灯りで煌々と港内を照らし、3度目の空母入港に向けて見えない緊張が高まっているのを実感。そして、我々も・・・2008年退役が予定されているキティホークの、搭載機を載せた状態での姿を見るのは恐らくこれが最後のチャンスになるだろう。天気はいいだろうか、機材にトラブルはないだろうか・・・そして、小樽の夜は更けていったのである。