尾道、岩国・・・時を駈けるおっさん

RF-4B of VMFP-3(RF26/Bu.No.153110)

なぜだろう・・・制服姿の富田靖子にこんなにも惹かれるのは。
と、また唐突な書き出しだが、どうも最近面白い地上波の番組がないので、同居人の好みでCSを流していることが多いのだが、今日はホワイトハウスからの流れでいつの間にか日本映画専門チャンネルになっていて、「BU・SU」をやっていたのだ。しばらくボーッと見ていたが、あれ?トミヤスさんが出てるぞ、なんだこれ・・・とプログラムを見てびっくり。懐かしいなあ、1987年の映画だ。
確かこれ、吉祥寺の映画館でオールナイトでやった富田靖子特集、「姉妹坂」からこの「BU・SU」まで4本位ぶっ続けで見たんだっけ。周りはファンクラブの奴らばっかりで、「いや〜この間はどうも」「○○は行きました?」「いや、アレは行かなかったんすよ〜」という会話が飛び交い、皆ポスターやらグッズを山のように持っていた。もちろん、私は今も昔もそういう集いには縁がない方なので、私以外全員が知り合いか?というようなホールの中で肩身も狭く一晩を過ごしたのだが、そうねえ、特に顔が好みのタイプというわけでもないのに、スクリーンの中の彼女を見るのに、妙に照れていたよな〜、まあ、それも理由があるのだけれど・・・
もう15年以上も前の話だが、最初の「姉妹坂」で、あまりの演出に(見ていただければわかります)館内が大爆笑の渦に巻き込まれたことや、「BU・SU」がやたら辛気くさく、テーマや狙いも今ひとつ掴めなかったがエンディングの原坊の歌で妙に切なくなったこと、「ときめき海岸物語」の直球ぶり、すべてが終わって外に出た時、まだ夜も明けず真っ暗で(今くらいの季節だったろうか)寒くてピン!とはりつめた空気の中を吉祥寺の駅に一団でゾロゾロと歩いていったのをはっきり覚えている。

さて、話変わって1988年の岩国、この年は悪友と18きっぷでオープンハウスに向かったのだが、途中で尾道に1泊し、下山平成三部作じゃなかった大林尾道三部作の舞台を訪ね歩いている。まだ展示機にはVMFP-3"Eyes of the Corps"のRF-4Bがいた頃の話である。大昔の話とて、写真もモノクロっすよ〜。RF-4Bは傑作戦闘機、F-4ファントムII海軍形の偵察機バージョンだが、海軍はRA-5Cヴィジランティ、RF-8Gクルーセーダーを装備したために1機も保有せず、海兵隊のみが保有した機体だった。ちなみに、現在も空自が保有百里の501飛行隊で運用しているRF-4Eは当形の姉妹モデルに当たる(E形は空軍形輸出用モデル、C形はアメリカ空軍モデル)。

ああ、今日はこのネタは脱線だったな、本筋はこっち。尾道といえば、眼下に尾道水道、対岸の向島を見下ろし、桜の名所でもある千光寺が有名で、もちろん我々も訪れたのだが、本当の目的地はこちらだったのだ。市街の西の端、山の斜面の中腹にある西願寺。駅から歩くと多分30分以上はかかったと思う。山門に続く石段は、見覚えのある方も多いことだろう。道化の格好をした富田靖子が座っていたあのロケーションそのままである。

まさに坂の街、尾道を眼下に見下ろす山門。ここは「さびしんぼう」で尾美としのり演じる主人公、小林捻侍演じる住職の息子である井上ヒロキの自宅という設定になっていて、建物もそのままの姿で劇中に登場する。映画の冒頭、望遠鏡で自宅のドタバタや富田靖子が二役で演じるあこがれの美少女を覗き見るシーンで、まさに見られているのがこの山門の風景というわけ。

山門をくぐって右側、境内は斜面の中途ゆえあまり広くはないのだが、ちょっとした広場に鐘堂が置かれている。ここは藤田弓子演じるヒロキの母がゴキブリが背中に入ったといって周囲を駆け回るシーンに登場する。

それを見守る(ヒロキにしか見えない)「さびしんぼう」が腰掛けていたポーズを再現してみた私(気色悪〜)。このお寺、もちろん特に観光地というわけではない。どこにでもある街のお寺で、観光客が来ることなど想定していないのだが、当時はロケ地巡礼が盛んな頃で、駅前の観光案内所でもロケ地マップを配っていたし、境内の掲示板にもポスターが貼ってあったり訪問帳が置いてあったりして、他にもそれと思しき連中が何人かいた記憶がある(用もないのにこんな寺―といっては失礼だが―にはよそ者は来ない)。寺の方でも当時は慣れたもので、知らない男共が勝手にうろついていてももちろん気にする風でもなく、ああだこうだと写真を撮っていたら、なんと住職さんが車で帰ってきた。あれ!?スクーターに乗ってるんじゃないの?(笑) しかも住職さん、捻侍とは似ても似つかぬ優しそうなメガネ男子でした。
そして、何やら奥の方が騒がしい・・・と見てみると、なんと解体工事をやっている。本堂に続く住宅部分?を業者がメリメリと壊しているのだが、そこに住職の奥さんがやってきて(こちらも藤田弓子さんとは似ても似つかぬ方でした)、今日で壊しちゃうんだとのこと。なんと、映画に出てきたヒロキの家は、私の訪れた日を最後に原形を留めなくなってしまうのであった。

西願寺の下、市街から登ってくる道が寺に向けて分岐する四つ角は、ヒロキが自転車のチェーンが外れてしまって途方に暮れている橘百合子(富田靖子・二役)に出会う場所。セーラー服のトミヤスさん、とてもこの世のものとは思えないほど可愛かった(当時)。本日見た「BU・SU」はさらに2年後の作だが、エンディングのスチールが尾道の頃のトミヤスさんとオーバーラップして、なんかオセンチな気分になっちゃったな〜。今でも「さびしんぼう」のクライマックス、意を決して渡し船向島に住んでいる(らしい)百合子に会いに行ったヒロキが、「もう・・・会いに来ちゃ・・・いけない?」「・・・いけない」と答えられてしまうシーン、オジサンこの歳になっても、いやこの歳になったからこそ涙なしでは見られませんよ。
CS、視聴料高いけど、いろんな夢を見せてくれる(昨日もずっと麻生久美子見てた)。入っておいて損はありません。