起て!蒼き獅子

Blueforce2007-01-21

昨日に続いて、下北のadd cafeでまたまたとろとろオムハヤシライス。我ながら好きやな〜。
本日は同乗者の方と、保険屋に提出する報告書類を事故状況の説明など表現を統一すべく一緒に書くことになったもの。この手の作業は通常のドッグカフェではなかなか難しく、さりとて犬連れではファミレスに行くのも難しい。add cafeはテーブルも広く、割とウダウダが許される雰囲気なのでこの手の使い方にはうってつけである。
火曜日にこちらの猫足屋が沼津からふうこ号を引き上げてきて、担当セールス女史から連絡が何度かあった。会話をしながらとりあえず見通しを訪ねると、「フレームは逝ってないから直るようですよ」あれで?本当かよ?
事故の当日は、あまりのぐちゃぐちゃぶりに復旧は早々に諦め、早くも次の車を物色にかかった私達。その気持ちは、セールス女史との電話で最高潮に達した。とにかく、もう降りたい。早く全部清算して、乗り換えてしまいたい。その方向で処理して欲しい、結局事故車じゃないか、車と心中するわけにはいかんのだ!

以前から何度も書いているように、もともと私の好きな車、というかカーライフのスタイルは、電車のような車、高い目線の大きなワゴンで後ろにゆったりとお客を乗せて楽しくお出かけ、というもの。具体的な装備としては、ベンチシート、サンルーフ、できればキャブオーバーが望ましい。最後の条件は久しぶりにハイエースに乗って再認識したが、正直なかなか自家用車の選択肢としては難しい。そんなわけで、希望のタイプとしてはワンボックスミニバンで、ずっと新形マイクロバスを待望していたし、この他にはVクラス、そしてレンジがいよいよ危ないとなった時は、現実的にはモビリオかキューブを見据えて次期車種を考えていた。
といっても、私がワンボックスに乗ったことは一度もない。学生の頃、最初に乗ったのはGTO(288じゃないっすよw)で、いつも男友達をリアシートにまで満載して遠くまで出かけたものだし、レンジはちょっと性格は近くなったもののSUVだった。今度こそ・・・と迷っていたところに、本当に小さな運命のポイントが一つ切り替わって、307CCというこれまたワンボックスとは似ても似つかない車になってしまった。これは本当に一目惚れという奴で、理性的に考えればとてもあり得ない選択だが、親も足腰立たなくなるにはあと数年の猶予はあり(多分)、残額設定ローンを組んで清算までの5年と決め人生の「期間限定車」として選んだのだ。一度はこういうクルマに乗っておくのも無駄ではないだろうと・・・おかげで、墓参りに行く時はレンタカーでラクティスを借りるなど、それなりにやりくりも余儀なくされているが、それもこれもあと4年、のはずだった。次はワゴン・ミニバンにと、選択の余地はない。
私の好きな車のタイプとしては、この他にもいくつか別のラインがある。モビリオ、キューブ辺りは若干かぶる、というか、どちらかというとこちらの系統だがいわゆるピープルムーバーのジャンル、あと一つは・・・とにかく変わったクルマ、である。
このジャンルにモロにハマるタイプの車種として、前回の候補選びに入っていたのがムルティプラ(先代)。あの深海魚のようなスタイルとマニュアルしかない設定で、まず普通の人はチョイスしない珍車(奇車とでもいうべき!?)であるが、先週末に生じた心の隙間に彼女が忍び込んできたのはこれは当然の帰結といえよう。あともう一つ、奇車ではムルティプラに一歩も引けを取らないアヴァンタイムが、本命2頭でのレーススタートである。この後に1馬身遅れてVクラス、さらにデビュー間近のデリカD5(先代のスペースギアもかなり欲しかった車種の一つ)が続く。デリカは事故翌日、早速秘密裏に展示している某店に見に行ってしまった。しかし本命の2車種はいずれ劣らぬ稀少車、どちらもすでに新車はなく、普通の中古雑誌には掲載台数は皆無、ネットで探せば辛うじて数台といったところ。アヴァンタイムは日本での販売台数はわずか150台!だったそうである。この間代々木公園の駐車場で偶然久しぶりに見たけど・・・
電話の頃にはすでにこれらの車に乗って箱根だ伊豆だ清里だと妄想の翼を広げて飛び回っていた頃で、その事もあって若干熱くなってしまったのだが、電話を切った後、ちょっと冷静になって考えた。そうか、直るのか・・・そして、納車の日のことを思い出した。

初めて見た、我が家に来ることになった307CC。同居人とふうこも一緒に、エンジンをかけたところを窓越しに覗き込んだ。今まで見たことないような、柔らかなオレンジのイルミネーションで照らし出された室内。当時の日記にも書いた、宇宙カプセルのようなその姿態とコクピットから溢れる光、初めて自分でギアを入れて走り出したおっかなびっくり、初めて屋根を開けた時の感動、70km/h走行がもどかしかった初めての遠出・久能山いちご狩り、1,000kmチャレンジとフェリーの旅・岩国ツアー、WRCばりのタイヤ交換を余儀なくされたキティ撮影行、ふうことひたすら最果てを目指した竜飛峠、そして毎週末のお台場、横浜、湘南へのドライブ・・・必ずしも我が家のライフスタイルには合わず、いつも屋根を開けて走ったわけでもなかったが、この1年我が家のシーンには必ず307CCがあり、それぞれが忘れがたい思い出である。

レンジを手放す時には泣く位、たかがクルマに思い入れてしまう(そのくせ洗車やメンテナンスはいい加減だが・・・)我々としては、あと4年で手放すと決めている車ではあるが、ここでこんな不本意な形で別れを告げなければならないことに、やはり納得がいかない。とはいっても、現実的な話、普通の車と違い可動ルーフを支えるパーツが何百、何千と収納されたところが滅茶苦茶になってしまったのだ、修理費がいくらかかるのか、そして全部向こうの保険で面倒見てくれるのか、4年後に下取りはつくのか・・・揺れ動く心、買う・直すは1日おき、いや数時間おきに入れ替わる。
そして事故後の初めての週末、やっとディーラーに足を運ぶことができ、セールス女史と初めての相談。ここで対策を話し合ううち、どうも最初の「直るみたいですよ」の発言が、私が受け取ったのとは若干違うニュアンスであったことが判明する。サービスフロントが女史に伝えたのは、「直して直せないことはない」(火星に人を乗せて飛ぶ宇宙船を「作って作れないことはない」?)。実は女史は転勤で違う店に移ったこともあり(それで引き続き我が家の担当ということになっている)、実車を見ていないのだ。ちょうどカメラを持っていたので、まだ消していないカードのデータを見せると、女史はドン引き。もっと軽い、バンパーがちょっと凹んだようなのを想像していたらしい。だ〜か〜ら〜、私が説明したのはちっとも大げさじゃないって判ったろ? 
つまり、「直して直せないことはない」というのは、技術的な問題もさることながら、修理金額が新車価格を上回るという、冷徹な経済性の壁に立ち向かうという問題も示唆していたのである。しかも、事故は機械的に査定や車両保険でこちらが設定した価額が満額出るというものではなく、どう頑張ってもこちらが期待した(せめて残額完済して頭金分が残る位)金額になることはないらしい。どうやっても人対人の交渉、揉めに揉めるのが常とのことである。
全損となれば、最悪残債を完済してチャラになるというシナリオ。頭金分が戻らなければ、車も金も一度に失うことになる。いったい俺が何をしたというの・・・こういう時人は、「うちの若いもんを抑えきれない」とか「街宣車で伺いますよ」とか言いたくなるのか。街宣車・・・なんと甘美な響きを持つ、そして実利的な言葉だろう。しかしそれは弱い人間のすることだ、我々はいついかなる時も、お天道さまの下を堂々と歩こう!
一応選択肢として、1007はいかがですか・・・ということで、試乗させてもらった。クリープをしないオートマが実に気持ち悪いながら、慣れるとパドルシフトも楽しい&快適で、後席の広さも申し分なく、まさに私の好みのピープルム−バーのジャンル。もちろん307CCと比べれば車格は落ちるが、楽しければそれは気にならないし、値段は約半額なので頭金0でも今より低額のローンが組める。そこで、冷静になって考えると、頭金頭金と言うけれど、307CCにはこの1年で80万円分、いやそれ以上の楽しい思いをさせてもらったではないか。もともと、外車のディーラーに来てあまりみみっちい金の話をしないようにと、前から気を付けてはいたのだが、頭金にも囚われるのはやめようか、と気づいたのだ。

現代の車社会では、カードの裏表は一瞬で裏返る。いつ私が事故の加害者になるかもしれないし、今回の事故は本当大怪我がなかっただけでも良かったとポジティブに考えられないか。そして、80万円は1年間の思い出代、買い換えるなら買い換えるで、面白いクルマを選べば損も得もない。そして・・・もし直るのなら、直そう。4年後の下取りが・・・というのはやめよう。その時にはその時の風が吹く、もともと過走行気味だし、逆に左ハンのSportは絶版で稀少車になってしまった、それはそれで事故車でも値がつくマーケットがあるかもしれない。
これが、ラテンのカーライフ。一度ここまで壊してしまえば、小さな傷がついても気にならない。ドーンと行ったれ!走ったれ! 4年先のことなんて知るものか。縁あってフランスから遠い極東の我が家に嫁いできたのだ、あの日初めて見た時のことを、そしてこの夜も、どこかの工場でボロボロの下半身をさらして寂しく佇んでいるはずの我が家の一員のことを忘れない。

もう一度、307CCに乗りたい。