北帰行 後編

Steam locomotive type C11

0700起床。本日が今シーズン最悪の荒天という予報だったのに、カーテンを開けたらいい天気である。しかし、テレビの気象情報では道央道札樽道ともに吹雪のため通行止めとのこと。
朝食はバイキングがついてきたので、世話もなくさっさと食って支度。ここからは荷物を持って駅前北口のホテルに向かうが、面倒くさいのでタクシーに乗ったら5分ほどで着いた。運ちゃんが言うにはここ数日でそこそこ降ったけど、降り出しは遅かったし積雪量で言うと平年並みとのことである。
さて、午前中でくそつまらん用事を終えると、昼飯を食って解散となったが、その後茶を飲んで、なんだかんだで解放されたのは1430。後は帰るだけなのだが、飛行機は1850発、何をすると決めていたわけでもなく、予報に反してこんな穏やかな天気ではササラ電車も動かない。腹が減っていないので食べ歩きも無理。まあ、当初から大体上がりの時間の見当はついていたので、小樽にでも行って来ようかな・・・と駅に来た。え〜、次の小樽行きは・・・1444か。あと10分ちょっと、いい時間だな・・・と、その下に表示されている列車名が、なんかごちゃごちゃして読みにくいんだけれど、「SL・・・クリスマス・・・小樽?」
ああ、そんな列車あったっけ、せっかくだからちょっと見ていくか、と思って、はたと考えた。この列車、当然小樽行き。全車座席指定で、指定料300円を払えば乗れるわけで・・・反射的に体が動いた。みどりの窓口はどこ・・・と、背後にあったものの、長い行列ができている。最後尾につけば最低でも15分ほどはかかってしまうだろう。万事休すか!?なんてことだ、こんな数分の差で・・・改札に取って返す。「この辺で他にみどりの窓口あります?」「東口の方にもありますけど」「そっちの方が空いてるかな?」「さあ〜あまり変わらないと思いますよ」 とりあえず東側の通路に走る。さて着いてみると、こちらはまったく行列なし。ラッキー! ここで発車5分前である。「今日のSLクリスマス号あります?」トントンと叩いている横で、「窓側あります?」「あと2席しかないんですけど、どちらも通路側ですね」ここで2枚とも出してしまって、どっちにします?というので、あ〜それでいいですそれでいいですと言って、もぎ取るようにして改札へ急ぐ。ホームに上がった瞬間、家族連れでごった返す中をC11がシュポシュポやって来た。
子供を前に立たせて記念写真に夢中の家族連れの間を縫ってカマの写真を撮った後、カマ次位の4号車に乗り込む。編成はC11 207を先頭に、小樽方4号車からスハフ42 2071+オハフ33 2555+オハシ47 2001+スハフ42 2261、最後尾に補機のDE15 1520が付いている。C11は区名札に「苗」とあったが、あれ?今在籍の2両とも旭川運転所の所属じゃなかったっけ?
デッキにはなぜかピエロの格好をした人達が・・・さらに客室に足を踏み入れると、しまった・・・との思いが。小さい子供の家族連ればかりなのである。そんななか、指定の座席のボックスに着いてみると、いかにも鉄ですといわんばかりの2人連れ。しかし、友人というわけでもなく、ここで知り合って意気投合したような感じである。会話の内容を聞いているとライトな乗り鉄らしいが、たかだか40分ちょっとの乗車時間、こちらもどうせ座りはしないが一応荷物を置いたりするので、「あ、通路側ですけどここですんで・・・」と言ったら、それまで満面の笑顔で切符を見ながら盛り上がっていたのが瞬時に凍り付いたような仏頂面に。
もう不愉快なのを通り越して気持ちいいほどの変身ぶりですよ、なぜお前「あ、どうも」位言えない?あぁ?ここだってどうせ誰も来ない日記だけど、誰が見てるかわからんから、あんまり不穏当な事は言わないけどな〜、やっちまうぞてめえ!
ま、こちとらコイツらのようなほのぼのライト鉄とは違う(自覚がある)ので、結局のところ小樽到着まで一度も自分の座席に座ることもなく、編成中を行ったり来たり。車内ではピエロの方々が巡回して子供相手にバルーンアート教室などをやっておって、その背中をつっついたりして通してもらいながら、デッキや洗面所などを撮影して回る。3号車はカフェカーだが、ここに来るとグッと鉄分が濃くなった。というか、全員そのスジの方である。なるほど、お互い棲み分けというわけだ。それなら、「SLクリスマスファミリー号」と「SLクリスマス鐵号」の2本建てに仕立てたらええやんか。
JR北の旧客に乗るのは初めてだが、内張りが全面的に張り直されていたり、実は意外に手が加えられていたのには驚いた。各車には座席1脚を撤去してストーブが設置されているのは知っていたが、それなりに改造されていても、各項目がさりげなく施工されており、あまり目に障らないように造ってあるのが好感が持てる。カフェカーもこうなってしまえば、原形くずしもあまり気にならず、却って楽しい付帯設備だ。で、写真を撮っていたら、サンタの格好をしたお姉さんに記念のポストカードをもらった。このお姉さん、背が高くてマイラバAKKOさんみたいな美人。誰・・・?
列車は札幌運転所を横目に見て、事務棟の横で思いっきり汽笛を吹鳴、海岸沿いに出てきた。凍てついた北の海、遙か彼方には留萌の山並みが見え、デッキに立っていると細かな雪の粉が舞い込んでくる。コテコテのイベント列車だけど、こうやってデッキに一人でいると、素の旧客の旅が味わえる。日の落ちかけた空の青さと、雪に吸い込まれた乾いた走行音、胸がしめつけられるような切なさ・・・現役旧客の頃の「ニセコ」も、同じ光景が見えたのだろうか。
時はあっという間に過ぎ、小樽築港に停車、何人かが降りていった。ここから終着小樽までは3分足らず、しかし着いてもすぐに転線作業を行うとのことで、あまりホームで撮影はできそうにない。果たして、5分ほどで列車は長万部方に引き上げて行ってしまった。身を切るような寒さの中で、戻ってくるのを待っていると、しばらくして中線に戻って来た。ここで心ゆくまで撮影。しかし、オレ本来小樽に散策&土産買いに来たんだけど・・・次の次の列車で戻らないといけないというのに、駅を一歩も出ずに終わるのか!?
結局、運河の方まで足を伸ばすなどというのはできるはずもなく、1634発の「エアポート170号」で帰ることになった。普通車もいい加減混んでいることもあり、ここからなら余裕でuシートに乗車である。300円を払って快適な指定席の旅・・・といいたい所だが、あまり暖房が効いておらず、窓際が妙に寒い。それでもうとうとしながら、3分遅れで新千歳空港に到着。さて最後の一仕事である。出発ロビーに上がり、チケットをチェックイン機に通したら、「お客様の便は本日欠航になりました」
来たよ・・・俺の便の1往復を飛ばしたな。吐き出された券を持ってAIR DOのカウンターへ。「大変申し訳ございません、次の2055発の便に振り替えさせていただきます。つきましては、お時間を取らせてしまいまして申し訳ございませんので、1万円をお返しさせて頂きます」よし!あ〜気にせんで気にせんで、どんどん遅れていいのよ!
荷物をロッカーに入れて、とりあえず飯に。初めてレストラン街に足を踏み入れた。いくらじっくり店を選んでも、なかなか時間がつぶれない。前日海鮮をたらふく食ったので、今日はとんかつにして、ゆっくりと夕食。さらにその後、いつもほとんど時間がないため、ほとんど知らない千歳の各フロアをくまなく探索した。土産物をじっくり選んだり、飛行機ショップを覗いたり・・・先日ステーキのお歳暮を送ってきた友人にタラバの足を送り、家には定番マルセイバターサンドを。いい加減飽きた頃、さすがにいいかと思って搭乗口へ。しかし、まだ乗る便の機体は影も形も見えず、表示では定刻30分遅れの2125と出ているが、さらに遅れそうな予感。隣の搭乗口では子供が力の限り泣いている。いい加減いきり立った乗客に殺されるのではないかと思うほど・・・あれと同じ便でなくて良かった。アナウンスはひっきりなしに各便の遅れと搭乗口の変更を伝えている。天候ばかりはどうしようもない。グラウンドのスタッフには何の落ち度もないのに、彼女(彼)らは彼女(彼)らなりに必死になって自分の持ち分をこなしている。果たして、今日寝られるのは何時になることやら・・・そもそも、あと1時間半くらいでここにあふれかえっている人々がすべて納まるところに納まるのだろうか。考えるだけで気が遠くなる。
本当にもうやることがなくなって、改札機の前、最前列の椅子でゲル化していたところ、やっと飛行機が現れ、乗客が降りてきた。機内整備が始まる。別の便は、羽田に着いてもすでに電車もモノレールもないとのことで、全乗客に一律5,000円を支給すると言っている。しかし、名目はともかく、それなら欠航の振り替えで1万円が一番くじ運が良かったかも知れない。ま、本当ならもうとっくに家に着いている頃だが・・・それが1万円分の代償かというと、妥当なのかどうか。結局搭乗開始は2140、離陸は2200だった。電車あるんかいな。
上空では寝入ってしまって、ドリンクサービスは飛ばされてしまった。う〜ん、ちょっと損した気分。着陸は2325、2330には降りることができたが、遠くに止めやがってその後がまるで国際線のような廊下の長さ。ロビーに出て地下に向かうと、警備員がモノレール・京急ともあと2本と叫んでいる。マジか〜!。時間を見て、モノレールに決める。京急は各停で、もう品川から先地下鉄は無理だと思われるのに対して、モノレールは途中天王洲アイルのみ停車の快速で、こちらの方が早いはず。なんとか東京まで出て中央線に、すでにこの時点で最後はタクシーに決定しているため、1駅でも家に近づかなければ・・・。
果たして、モノレールは通常の終列車で(この後の1本は特発)、人気のない各駅をものすごい勢いで通過、浜松町まで切れた走りで20分で到着。慌ててJRに乗り換える。ホームは皆「白い恋人」の手提げを持った同志ばかりで、東京にあって妙な北海濃度の高さにニヤニヤしてしまう。皆さん今日はホンマにお疲れさん、俺もお疲れさん・・・東京で乗り換えた中央線も武蔵小金井までの最終だった。市ヶ谷で下車し、最後はタクシーで帰宅。結局家に着いたのは、日付も変わって0100になろうとする時刻だった。