ミュンヘンのBMW博物館に1984年パリダカ優勝マシンを見る

BMW R100GS Paris-Dakar

昔、こんなのにも乗ってました。
2輪に興味のない方は、BMWがバイクを造っていることを知らないことが多いが、1923年に生産された同社初の2輪モデル、R32以来、世界中のロードに、オフロードに、そしてサーキットに足跡を残してきた実績を持っている。
昔、パリダカが日本でも世界でも人気の絶頂期であった頃、ご多分に漏れず夢中になって毎日のテレビダイジェストや雑誌を見ていたのだが、相変わらずのマイナー愛好癖で四つ輪には興味なく、追いかけるのはもっぱら2輪。当時、ホンダNXR750が1986年のデビューウィン以降独走4連覇を飾った頃で、そのレプリカともいうべきアフリカツインともども憧れのマシンだったのだが、いわゆるラリーレイドというジャンルを研究するうち、レイドモデルならなんでもござれになってきて、HRC―NXR750が参戦する前のパリダカで活躍した、ガストン・ライエ駆るBMWワークスのR100にもすっかりイカレてしまった。
当時、今のようにBMWのバイク専門誌があったわけでもなく、ビーエムのバイクに乗るというのは現在では考えられないほどマニアックな行為だった。自分でもシブシブの趣味だなとは思ったのだが、どうしてもあの牛のような巨体に跨ってみたい気持ち抑えきれず、パリダカマシンレプリカともいうべきオフロードモデルのR100GS、しかも巨大なタンクが見る者を圧倒する限定モデル、パリダカールを買ってしまった。
・・・まあ、いろいろありまして、このマシンとの過ごした日々はあまり長くは続かなかったのだが、初めてヨーロッパに行った時に、ミュンヘンを旅程に組み込んだこともあり、一度は縁あって乗ったBMWの故郷、噂の「4気筒」に行ってみよ〜!ということに。

これがその形から「4気筒」と呼ばれるBMW本社。右に見えるお椀の形をした建物が同社の今までのプロダクトを展示している博物館である。ミュンヘン市街の北側、1972年のオリンピック会場跡地であるオリンピック公園に隣接した場所に建っている。Uバーン(地下鉄)2・3号線の終点、Olympiazentrum駅下車すぐ。

入場料を払って入口から入ってすぐ、エスカレータ脇にさりげなく置かれていたのが珍奇なマシンが多いビーエムのバイクの中でも極め付きのモデル、1989年デビューの4気筒モデル・K1のプロトタイプ。モーターショーのコンセプトモデルならこの位はよくある話だが、なんとほぼこの形のままで市販車になってしまったという驚異のマシンである。さすがに今では見かけることは少なくなってきたが・・・

館内は確か螺旋状のゆるいスロープを上がりながら、展示してあるマシンや物品の時代が徐々に下っていくという構成だったように記憶しているが、これがBMWのバイク第1号車、R32。ボクサーの創始者、マックス・フリッツが1920年に設計したM2B15ユニットを搭載しており、現在まで引き継がれるボクサーツイン(水平対向2気筒)のレイアウトは、すでにこの時に確立されたもの。486cc(494ccのモデルもあり)の排気量で8.5馬力を発揮する。

この辺りは神話の領域なので、私が今回ここに来た最大の目的、R100ワークスモデルを。1984年のパリダカ、ガストン・ライエのライディングで優勝を飾ったマシンである。現役当時はいわゆるマルボロカラーだったはずなのだが、展示車には特徴的なカラーリングは残っているが、ロゴはなし。これが1984年当時のマーキングなのか、それともドイツ国内での展示にあたってのタバコ関係の広告禁止に則ったものなのかは不明。出力は展示脇のプレートによれば75馬力とのこと。

リアビュー。サスはフロントがマルゾッキ、リアの2本がホワイトパワー、ブレーキはブレンボR100は1983年ユベール・オーリオル、1984・85年ライエと3連覇を飾っているが、85年のマシンはBMWオフ車の有力コンストラクター、HPN社の製作によるもので、純粋なBMW製ワークスマシンとしてはこの84モデルが最後のものとなる。
この他にももちろん四輪、またBMWの歴史を語る上で欠かせない航空エンジンなど多数の展示品があるのだが、今回はここまで。というか、ほとんどこれ位しか撮っていないのです・・・というわけで、今回はこれにて終了!