キドニーな生活

a nose of BMW 320i

事故の数日後、保険屋から自宅に電話があったらしい。代車を出すので希望の車種があったら教えて欲しい、とのこと。同居人では話にならないし、こちらに回してくれと伝えたのだが、すでに何度か連絡が来た後だった。向こうの担当も女性で、同居人が車種が307CCだと伝えたら、「申し訳ございません、お恥ずかしいのですが私、あまり車に詳しくないので・・・」ガハハハ、なんだそりゃ?
お互い車を知らず、話がステルス機同士のドッグファイト(あるいは潜水艦同士の3次元戦闘)のようになってしまったらしい。「なんかいろいろ言ってるけど、アタシじゃわからないからそっちで話し合って決めろ」とのこと。するとしばらくして、こちらには男の担当者から電話。通り一遍のお気遣いの挨拶の後、プジョーさんでは代車を出していただけませんでしたので・・・うん、そうだろうね、そんなことも知らんで保険屋やってんのかね。同居人の時もこのやりとりはあったそうだが、同居人は爆笑していた。「聞いたんかい!聞いたんかい!」って後で一人ツッコミを入れていたそうである。
で、こちらのやりとり。同格のお車を用意させていただきますので、オ○○クスレンタカーで今ご用意できるのがBMW、3と5がございますが、どちらが・・・と言われれば、5に決まってんだろう!「あそうですか、しかし一応料金との兼ね合いもございますので・・・」じゃ言うなっての! なんじゃそりゃガハハ!
「ご自宅にお持ちすればよろしいでしょうか」 それでいいけど、車庫は自宅と若干離れた場所にあるし、家族で免許持っている人間は1人もいないし、シャッターの鍵は俺が持ってるきりだし・・・夜は何時までいいの?「20時まででございます」
フタマルマルマルか、ここの所ちょっと早く帰れないんだけど、仕方ないから今日はそこそこで帰ろうか・・・あ! 会社まで持ってきてくれるの?「それでも結構でございます。場所はどちらになりますでしょうか」
地獄の1丁目の交差点の所だよ、自宅よりもおたくの事務所からなら近いかもしれない、なるべく遅い時間にして欲しいんだけど。「かしこまりました」
と、電話を切って(年末に携帯買っておいて本当に良かった 事故の当日はもちろんだが、それ以来携帯なしでは連絡や交渉がまったくおぼつかない)小1時間ほど・・・携帯が鳴った。
「今、交差点のお近くなのですが」アホか!今持ってきてどうする!仕事中だっちゅ〜の!
下まで出向いてみると、黒い320が確かに停まっていた。「傷のチェックをして、ご了承いただきましたらここにサインを」ったく、何も聞いてね〜な・・・「こちらが鍵になります。それでは私はこれで」
どうしよう。まだ帰るわけにもいかないし、この辺は駐車場も高い。ここ数日の帰宅時間までいたら3,000円位にもなってしまう。仕方ないからさっさと帰るとして、パーチケどっか空いてないかなあ・・・あ?これどうやってエンジンかけるんだ!?

キーには鍵が見あたらず(変な表現だが)、車に鍵穴もない。コンソールになんか変な穴が開いてるけど、ここに差し込むのかな? 果たして、そこは確かに鍵穴(消しゴムのような電子キー本体を差し込むような大きさの)だったが、バチンと差し込んで電源は入ったが、さて次はエンジンはどうやって・・・オオ!始動ボタン、初めて押すよこういう仕掛けもん・・・ところが、ボタンを押し込んでもエンジンはウンともスンとも言わない。この辺から背中に冷たいものが流れ出した。駐禁監視員が跳梁跋扈する東京で有数の大通りに、エンジンのかけ方がわからない車が取り残されて、ああああ・・・いったいどうしたら・・・・エンジンのかけ方位説明して帰れやゴルァ! 何度も狂ったようにボタンを押した挙げ句、グローブボックスからマニュアルを取り出してページを繰る。と、ブレーキを踏んで押せと書いてあった。ま、そりゃそうか・・・しかしパニクってしまうと、そこまで考えが思い至らないのである。いや〜、参った参った。とんだ赤っ恥かいちまったよ・・・
しかし、パーチケに停めてから落ち着いて車内を見渡せば、かつては六本木のカローラなどと陰口を叩かれた最下級グレードでも、本革で武装しているとはいえ正体は大衆車の307CCと比べ、なんと高級感溢れる車内・・・ただ、ダッシュボードの造作が今ひとつ趣味ではないのだが、これがレンタカーとは驚きだ。ま、高級車レンタカーなんて、こういった事故の代車需要がほとんどなんだろうな、しかし、いかに価格帯がほぼ同じとはいえ、出自ではまるで格上の3シリーズを出させるとは、さすが307CCただ者ではない。
というわけで、不本意ながら、今我が家の車庫にはババリア発動機屋製の黒い弾丸(おいおいそれはバイクの形容詞だ!)が収まっている。ビーエムとして見れば、乗ったのはこれが3台目だが、今度のはタイヤが2つ多い。これも初めての経験となるセミオートマや、異常に重いステアリング(これがゲルマンの設計思想なのですか!?)に戸惑いながらも、なんでも与えられた機会だからせいぜい有効に使わせてもらおうと思っているが、これ、誰も何も言ってこないけど、いつまで乗ってていいんだろうか? まさか手配しただけで、支払いは俺とかガクガクブルブル・・・