正真正銘前代未聞の大ピンチ!官能小説アレンジ

Blueforce2007-04-03

ウーノコータロー著「濡れて疾走る」より
あたし、先週の日曜日、横須賀基地に戦艦見に行ったんです。
そうしたら、おフネ仲間のO社長から連絡が入って、ちょっとお茶しないかって誘われたんです。
市内はどこも桜祭りのせいですごく混んでいて、今日は分遣隊長もいないからどこでも良かったんだけど、せっかくだからお洒落なところがいいって、あたしがO社長に甘えて、観音崎のKQホテルに行くことにしたんです。
駐車場に車入れて、さ〜軍艦でも見ながら茶でもしばくっぺや〜・・・あらいやだあたしったら、O社長の逞しい腕を見ながらちょっとドキドキして、屋根を閉めたんです。そうしたら、なんか助手席側の窓が閉まっていないような気がして、「あれ?」手で触ってみたんです。そうしたら、抜けてるように見えたのにちゃんとガラスの感触がしたんです。
ちょっと変だな〜と思いながら、鍵を抜いて降りようとしたら、O社長が「屋根片っ方ハマッてないけど、いいのか?」って言うんです。えっ!?ハマッってないの?いやだいやだどうしよう・・・!
って、よく見たら・・・ホントにハマッてなかったんです。

え!?

は!?
いったいどうしてこんな・・・もうあたし、お茶どころじゃなくなって、手で一生懸命ルーフをつかんで押したり引いたりしてみたんです。でも、ビクともしないんです。
しょうがないから、近くのディーラー探して、見てもらおうと思って、O社長にもついてきてもらって、壊れたプラモデルみたいになっちゃった車を最寄りの店に持って行ったんです。
出てきたおじさんは、早速あたしの車のダッシュボード左下を開けて、テストブックで診断を始めちゃったんです。ア〜レ〜こんな明るいうちからお医者さんごっこは、おじさんちょっと大胆なんじゃないかしら・・・でも、おじさんひとしきりあちこちいじくり回した後、「こんな症状は見たことがない。206CCだと結構あるんだが、307CCのルーフはほとんどトラブルはないんだよ」なんて言葉で責めてくるんです。あたし、この車、まだ買って半月しか経ってなくて、よくわからないんです、って言ったけど、なんで乗り換えることになったのかとか、この車の素性とか入手経路とか前のオーナーのこととか話すとヒジョ〜に話がややこしくなりそうだったから、それ以上は黙ってたんです。

油圧を抜いて引っ張るしか手はないんで、うちで修理になったら今日は車じゃ帰れないよ、これで走るのに支障はないんだから、家まで持って行って行きつけの店に持って行った方がいい」って言われて、そのまま帰ることにしたんです。確かに、普通に走る分にはスピードを出すとちょっと風切り音がうるさい位で、雨が降らなきゃ特に問題ないんで、O社長をお宅まで送って、帰ることにしたんです。でも、途中から一番恐れていた雨が降って来ちゃって、濡れちゃいそうなんです。車内が。
なんかすごくびっくりしちゃって、あたし1人じゃどうしていいのかわかんなくなっちゃって、ホントは電話しちゃいけないって言われてたんだけど、2代目オーナーに電話しちゃったんです。2代目ならこの車のこといろいろ知ってるんじゃないかと思って。で、車持って行ったら、2代目もびっくりしちゃって。
どういう状況でなったんだ、って聞かれたんだけど、あたしその時のこと覚えてないんです。だって307CCのオーナーが屋根開け閉めするのって、呼吸するのとおんなじだと思うんです。特に傾いた所で閉めたわけでもなくて、水平のホテルの駐車場だったんです。
多分、ロックのアームが結合する前に閉じちゃって、それで屋根同士がピッタリくっつかなくなっちゃったんだと思うんです。でも、あたしは機構はどうあれ、Aピラーもしくはルーフに歪みが生じるんじゃないかと思って気が気じゃなかったんです。ルーフはまだ最悪取り換えがきくけど、Aピラーが歪んじゃったら、取り返しがつかない、ってあたし泣いちゃったんです。
でも、横転しても大丈夫なようにロールケージが仕込まれているAピラーがこの程度のことで歪むはずがない、もし歪みが出たらフロントガラスが割れるはずだ、って言われて、ま、そりゃそうだわな、って納得したんです。
その後、この間の人とは違うSEAL隊員さんが現れて、車を工場に持って行ってくれたんです。もう前面倒見てもらってた所は見切りつけたんで、ちょっと今までより遠くなったけど、信頼の置けるところだからって紹介されて、そっちにお願いすることにしたんです。まだ今原因究明中なんだけど、ルーフにも歪みは来てなくて、開閉の試験を繰り返しているところみたいなんです。社長さんが知ってる限りでは、こういう事例は過去に何件かあったんだけど、噛み込み方が、あたしの車のようなのは聞いたことがないらしいんです。
いったい、あたしの車に何が起こったのかしら?
なお、本日の日記の内容はすべて事実ですが、設定や一部言動、思考はフィクションであり、特定の実在する作家、小説とはいっさい関係はありません。