キティホーク夏のクルーズから帰る

Blueforce2007-09-21

・・・長い4日間になる。
9月二度目の三連休は、春秋彼岸恒例の墓参に加え、横須賀地方隊体験航海・展示訓練、キティホークの入出港と連日イベントが目白押しである。イベントの数を日数で割ると1を超えてしまう。ということは、1日に1個以上のイベントがあるということになる・・・
手始めは19日に搭載機が厚木に帰投してきたキティホーク。これは当然、5月15日に出港する姿を捉えた時のように、東京湾フェリーで衝突コースに乗せたいところであるが、先に述べたように無闇やたらにフェリーに乗っても目の前に来てくれるわけではない。まずは浦賀水道航路南口入航時刻を把握しなければ話にならないのだが、 昨今の情勢により時刻は24時間前にならないと発表されないので、前日までは海図を引っぱり出してのイメトレしかやることがない。
前日は朝から仕事も手につかず、数分おきに巨大船情報をリロードし続けるも、午前中はついに出なかった。昨日来、ものすごい数のメールを打って、メールが来て、教えて教えられて・・・携帯がなかった頃は、こんなことをする必要もなかったが、その分だけ蚊帳の外に置かれていたということだ。人間、やはり一度蜜の味を覚えてしまえばやめられないということか・・・そして正午過ぎ、ついにページ最上部の北航船の隻数が数分前に比べ1隻増えた。来たぞ・・・!果たして、「0730 USS Kitty Hawk 官船」の文字がキター!
フェリーの運行時刻は、9月第3週以降の平日は前回と同じく閑散期対応の2船ダイヤとなる。一日にして6往復も少なくなるわけだが、これをもって空母に最接近のチャンスが減じるとするのは早計。結局、運行時刻に対してどれだけ近接した入航時刻となるのかが鍵となるわけで、確かに一番入航の可能性が高い0700過ぎの時刻がほぼ30分ヘッドなのは有利なのだが・・・そして、今回は2船ダイヤが幸運を呼び込んだ。第2便が久里浜・金谷両港とも0720発なのだ。
浦賀水道航路南口入航時刻というのは、以前にも述べたかもしれないが金谷港防波堤を基点に西に270度の線を引いたUSラインを通過した時刻のことで、フェリーは(当然のことながら)USラインと同緯度の金谷港から西北西に位置する久里浜港に向かって斜めに航路が設定されている。全長約5.85マイル(海里:以下すべて同)のフェリー航路、両港から0720に出港すれば、(上り下りで5分ほどの所要時分の差はあれど)浦賀水道航路の南の入口である中央第1灯標とUSラインの南北ほぼ中央に位置する航路中央点は0740前に通過することになる。

▲海図番号W1062「東京湾中部」より
海上交通は右側通行なので、北航してくる船舶は水道の東側、房総半島寄りを通過することになるし、浦賀水道航路自体もフェリーの航路から見ると若干金谷寄りにずれているので、厳密には浦賀水道航路北航船との交点は金谷発ではマイナス数分、久里浜発ではプラス数分となる。USラインから交点までの距離は1マイルちょっと、浦賀水道航路内は速力の制限区間で最高速力は12ノットなので、この距離を5分で走ってくる計算だ。北口入航時刻の通過地点から遠く、その分不確定要素も大きくなる南航船に比べ、計算は楽だし、予測は固い(予定自体が狂わなければ)。
・・・どうでしょう。久里浜発なら東南東に向けて迎撃する形、金谷発なら西北西に向けてきつい角度で併走する形になる。久里浜発ではやはり中央よりプラス数分が痛く、恐らく前に出ることは難しいだろうし、なにより逆光だ。計算上はまさに衝突コースともいえるのは金谷発だが、これだと当然久里浜からの復路になるため、起床・出発時間がさらに早くなる。すなわち、初発である久里浜0620発の1便に乗らなければならない。朝0500前出発ですか・・・
そんなことを考えていたら、どら猫さんから「起きられたら横須賀で入港を撮るつもり」との連絡があり、どうせ早起きしなければならないなら一緒に東京湾フェリー来ませんか、とメールを送ったら、見事に乗って来て、「東京湾フェリーで空母を撮る会」は初の2人参加となった。さらに、会員番号2番?のごつさんからも参加の問い合わせがあり、車がないので・・・ということで、自宅近くまで迎えに行くことになった。出港時刻0620からの逆算では、ごつさんを拾うのは0500過ぎ、自宅出発は0400過ぎ・・・各方面への連絡や(明日のことだけではない、24日に至るまでのこの連休すべてのイベントに関して)機材の準備などをしていたら、簡単に0000を過ぎてしまう。ここで熟睡してしまえば勝利はおぼつかない。もう風呂に入るのも面倒なので、0300起きでシャワーを浴びることにして、とりあえずソファで若干無理な体勢で0130就寝。
突然、顔に何か生暖かいものが当たる感触で目が覚めた。分遣隊長が寝室から起きてきてベロベロ舐めていたのだ。時計を見るとジャスト0300! 夜中にブログを書いていると、普段でも1時間おき位に起きて居間の様子を見て、(安心して?)帰って行くのだが、よく起床時間と決めた(もちろん、本人というか本犬には時刻は知らせていませんwwww)ジャストの時間に起こしに来たもんだ・・・地震予知とかになると超能力の片鱗も窺えない分遣隊長だが、それでも人間の窺い知れない不思議な力をこの小さな体に秘めているというのか・・・今回は基地や施設内に入るミッションではないため、分遣隊長も同行で、フードやう○ち袋の支度などもしつつ、ごつさんとどら猫さんにメールを送る。
0415出発。いつものことだが予定よりも若干遅れ、45分で戸塚に着くのだろうか!?と若干焦ったのだが、そこは夜明け前、三京―横新経由でジャストに着いてしまった。本日午後から出勤だというのに朝0400起きの酔狂なごつさんを乗せて、来た道を引き返す。途中で横横に針路を取り、徐々に白みかけてくる空を見れば、雲一つない超晴天! これで予定通りに入ってくれれれば・・・どら猫さんも順調に歩を進めているようだ、こちらは予定より大幅に早く0530過ぎにフェリーターミナル到着。
自分たちで売っているくせに、相変わらず「往復周遊券利用」と言うと返答が要領を得ない駐車場の誘導のおっちゃんに指示されて、いつもと違う(通勤者用?)スペースに車を停める。時間はたっぷりある、というかあり過ぎる位。ほどなくどら猫さんも到着、なんと一昨年のオシアナでお会いして以来の奥様もいらして、総勢4人+1匹の参加人数となった。往復周遊券は860円なので、3,440円の臨時収入というわけだ。一番心配していた、入航予定自体の遅れだが、プレーンガードのHH-60?が上空を飛んでいくのが見えて、とりあえず安心、というか、もう目の前まで来ているのではないか?と不安になる。金谷と違い、久里浜は港内を回り込んだ所にフェリー岸壁があるため、海上の様子が見渡せないのである。
すっかり陽も高くなった定刻0620、我ら逆ハン愚連隊じゃなかった「東京湾フェリーで空母を撮る会」の素晴らしき傾奇者の面々を乗せた「いくさ船」、かなや丸は荒々しく出港・・・

と思いきやいきなり目前に貨物船が真横に立ちはだかるwwww なにやってんだよ、早くどけよ! もともと、これも以前紹介したようにほとんど同時交差ならフェリーが譲ってしまう傾向にあるため、少し早着位の方がいいのだ。といっても、久里浜出港時点でオーバーペース気味でも、金谷で調整してしまうから意味はないのだが、気は逸る・・・

平日の朝6時過ぎの便では同業者はおろか乗客さえもいるかどうか怪しいものだが、予想に反してゴルフ客が数十人乗船していた。あんた達、今日休みなら4連休じゃん!?ずいぶん優雅なもんですなあ・・・あ、オレもそうか・・・いずれにしても、オープンデッキに上がってくるような輩は皆無。9月も下旬になったのに、今日も暑くなりそうだ、しかも異常に湿度が高い。まあ、あまり靄が出ていないのが救い。

出港後約10分、予想しなかった収穫が。随伴艦と思われるタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の艦影が近づいてきた。超逆光なのでハルナンバーも何もわかったものではないが、現在の配備艦の中でシャイローUSS Shiloh CG-67はMD専従だから、小樽の時と同じカウペンスUSS Cowpens CG-63かな?(後に逆光状態を脱した時にカウペンスと確認)

次に現れたのは、北の方からものすごいスピードで我がフェリーに向かって突進してきた(我ら不審人物と通報が行ったか!?)海保の巡視艇、はかぜCL37。船尾を横切って南の方に消えていった。
抜けるような晴天に、参加のメンバーは皆言いしれぬ高揚感を感じていた(はず)。遠くに見える、ちょっと大きな船がみな空母に見えて、その都度「あっ!あれは!?」と声を上げてしまう。空母が現れるタイミングは早過ぎても、遅過ぎてもいけない。こちらの都合のいいように(発表されている時刻通りに)動いてくれなければならないのだ。そして・・・入港直前。最初に見つけたのはごつさんだった。南の海上に見える艦影は、間違いなく空母。しかし、その予想より若干早い出現に、不安が胸をよぎる。こりゃ・・・ダメかな〜

とりあえず、いつもの「ウルトラクイズ・グアム上陸編」ショット!? 分遣隊長、最近房総の田舎に行ってないっすね〜。今日も上陸はかなわず、来た便を降りることもなくトンボ帰り。しかし、これからが戦いの本番だ。さ〜便所でも行って万全の体制で臨むべか〜!

金谷のターミナル建物越しに、刻々と近づいてくる空母を不安げに見つめる会員の面々。早く、早く出てくれ〜!船橋にねじこみに行こうか、あるいは強硬手段(オイオイ)・・・永遠とも思える20分のターンアラウンドを終えて、定刻0720出港〜!

出港時、すでにキティはここまで近づいてきていた。右舷側をプリンス海運のRORO船、「ぷりんすはやて」に先を譲りつつも、明らかに交点に先着する位置関係。ここまで来れば我がフェリーが頭を抑えることはもう不可能だ。あ〜あ、また5月の出港と同じでケツ回り込みパターンか・・・

アイランド後部の三次元対空捜索レーダー、SPS-48Eはまだ回転している。今回の入港直後にファミリークルーズを実施すると言われているキティは、横須賀入港時には異例となる固定翼機を数機デッキに搭載したままの姿、これはなかなか撮れるものではない。確認できる範囲では、前部デッキ、アングルドデッキ寄り?にVAQ-136のEA-6Bダブルナッツ、NF500(Bu.No.163524)、VAW-115のE-2Cダブルナッツ、NF600(Bu.No.165296)。アイランド横付近にVFA-102のCO機、F/A-18F・NF102(Bu.No.165882)が見える。この他、NF102の後方にVFA-192のF/A-18C、NF310(Bu.No.164067)が駐機している。

先ほどの巡視艇、はかぜが艦尾を押さえるなか、真横までやってきてしまったキティだが、なんと素晴らしい構図の絵になった。わかりにくいが、後方に富士山が見事なシルエットを見せているのだ。これが冬だったりしたら、まさにNavy News Standや艦のクルーズブックにでも使ってもらえそうなショットだ。デッキから、一度着艦したプレーンガードのHS-14所属SH-60F・NF620(Bu.No.164078)がもう一度発艦して行く。いつものことだが、後部エレベータの開口部分から向こう側、三浦海岸?辺りの街並みが見えているのにも注目。同時に、ハンガーデッキ(格納庫甲板)とフライトデッキの間にあるギャラリーデッキのフロアの薄さにも注目されたい。

入港時の登舷礼の準備のためフライトデッキ上に並んでいる水兵の身長とあまり変わらないように見える。しかしこのギャラリーデッキは、5,000人を数える乗組員の居住区として重要なスペースであるばかりではなく、フォレスタルForrestal級以降のいわゆるスーパーキャリアーでは、強度甲板兼対弾装甲甲板として重要な水平装甲の役割を担っている。

また、こちらも非常にわかりにくいが、最前部のエレベータ開口部の向こう側、左舷内側の壁にC-13カタパルト用のピストンのスペアが架けられているのも見える。この写真ではアルミ箔の断熱材?にくるまれているが・・・

これがピストン本体。2基並列に並べられて、約80mほどのシリンダー2条を高圧蒸気の力で走り、シャトルで前脚のランチバーに結合した航空機を速度0からわずか2秒でおおよそ150kt(約280km/h)まで加速させる。後ろ寄り、シャトルの下の部分に「2358lb」表記があるので、重量は約1.07tであることがわかる。

そして、その上、ハンガーデッキの天井から下に張り出している部分は、位置関係からカタパルトのシリンダーや後端部の機構を収めている部分なんだろうな、というのもわかる。ふんふん、改めて見ると勉強になるもんだ。
0727でほぼ真横になってしまった。予定時刻よりかなり早いと思われる。完全にフェリーの正面に来てしまえば、船橋に阻まれてしばしの間写真を撮ることはできない、しかも、フェリーはそんな我々の焦りをあざ笑うかのように、なんと軸線を空母に合わせるように右に若干針路を修正しさえするのだ!これではいつまで経っても空母が見えてこないではないか!魚雷でも撃つつもりか?いい加減にしろや〜!

やっと艦尾が正面から抜けた。艦上の水兵の数も増えて来る。4カ月ぶりのホームポートへの帰港だ、さぞや上陸が待ち遠しいに違いない。艦を見てみれば、舷側の赤錆汚れがすごいこと!長期の行動もさることながら、やはり艦齢のこともあるのだろう。

艦首前方に、南航してくる掃海艇はちじょうMSO303(掃海隊群第51掃海隊・横須賀)が見えてきた。完全に前回と同じ後打ちだが、ド順光だし天気はいいし、少ないけどヒコーキも載ってるし、どら猫さんにもごつさんにもまあ満足して頂けたかと、主宰者としてはひとまず胸をなで下ろす。ホンマ、これが全然遅れでスカ引いたりしたら目も当てられない。4時起きで金谷までフェリーで遊覧なんて笑い話にもならん。

先行させた「ぷりんすはやて」の後を追い、いよいよ浦賀水道航路に入って行く。

浦賀水道航路中央第1灯標と重なった。いいねえ、このショット!(また自画自賛か・・・)

0739、今回のミッションこれにていよいよ最後! 5月の時よりも距離は開いてしまったし、前に回り込むこともできなかったが、久里浜発便では遠過ぎるうえにド逆光で、与えられた条件の中ではベストの選択をしたはずだ。欲を言えば、久里浜発と金谷発で等時出港の機織りダイヤではなくて、90度位相をずらしてくれるとより撮影時刻のカバー範囲が広くなるのだが・・・2船ダイヤではそれをやると時刻が偏ってしまうので無理なのはわかるが・・・

やれやれ、やっと一息ついたところで、こちらもお馴染みの分遣隊長との船上ツーショット。ま、いつものほとんど判別不可能な超シルエットですけど・・・まだまだ朝ごはん前です。
そして、0800、1時間40分の往復の旅を終えたかなや丸は無事に久里浜港に接岸、0300起きの撮影ミッションは所要時間5時間で終了した。皆さんお疲れさまでした!おかげさまで盛会でした、またのご参加をお待ちしております! ここでどら猫さんと奥様とはお別れし、今さら家には戻れない?(誤解を招く表現だなや〜wwwww)ごつさんを帰りがてら会社に送り届けつつ、途中で写真を撮ったり飯を食ったり・・・ということで、第2のミッションが幕を開けたのであった。

空母を撮り終えた高揚感のなせる技か、とりとめもないことをくっちゃべりながら走っていたら、渋滞につかまり横須賀に行くのに思いの外時間がかかってしまった。もとよりもうお腹一杯なので、横須賀で入港する姿を・・・とまで欲張るつもりもなかったのだが、あわよくばと心の奥底で思っていたのも事実。しかし、なんだかんだで久里浜着後1時間も経っており、実はなにげに足の速いフネはとっくに横須賀に着いている・・・案の定、車を降りたところ、居合わせた人に「空母入っちゃったよ」。
まさに入港直後のようで、フライトデッキ上の登舷礼はまだ解かれていない(右奥の白いブツブツのようなもの)。先に通過していったカウペンスは早々に出船で一番手前、ハーバーマスターピア・westに接岸している。反対側のeastには同じくタイコンデロガ級のシャイロー、その奥のバース6にはアーレイ・バークミサイル駆逐艦ジョン S.マッケインJohn S.McCain DDG-56、バース7にはブルーリッジUSS Blue Ridge LCC-19が停泊している。キティが入ったのは現状の空母桟橋であるバース8。

と、下から何やら「パララパッパパララパッパパララパッパパッパパー! 出港用〜意!」と出港ラッパが。しばらくすると、大勢が見ている目前で護衛艦ありあけDD109(第2護衛隊群第6護衛隊・佐世保)が出港して行った。佐世保が母港ながら先日の横須賀サマーフェスタでも見かけた同艦、最近横須賀に居ついているのだろうか。艦尾ハンガーにはSH-60Jが1機収容されている。出港後針路90度で東京湾外に向けて消えていった。