CVW-11・ニミッツ搭載機を見る

Flight deck of USS Nimitz CVN-68

今回の航海でニミッツが搭載している第11空母航空団の構成飛行隊・搭載機は、以下のようになる。
VFA-41"Black Aces" F/A-18F(複座形スーパーホーネット) モデックス100番代
VFA-14"Tophatters" F/A-18E(単座形スーパーホーネット) モデックス200番代
VMFA-232"Red Devils" F/A-18A+(レガシイホーネット) モデックス300番代
VFA-81"Sunliners" F/A-18C (レガシイホーネット) モデックス400番代
VAQ-135"Black Ravens" EA-6B モデックス500番代
VAW-117"Wallbangers" E-2C(ホークアイ2000NP―ニュープロペラ) モデックス600番代
HS-6"Indians" SH-60F(対潜形)/HH-60H(捜索救難・特殊戦形)  モデックス610番代
この他にCOD(Carrier Onboard Delivery)任務を受け持つVRC-30 "Providers"DET.3(第3分遣隊)のC-2Aが随時陸上基地と空母の間を行き来している。
空母戦力の要となる打撃力を受け持つのは、トムキャットなき今空母航空団の標準的編成であるスーパーホーネット複座・単座飛行隊各1個、従来形(レガシイ)ホーネット飛行隊2個で計4個のホーネット飛行隊、この他に電子戦攻撃飛行隊(VAQ)・早期警戒飛行隊(VAW)・対潜ヘリ飛行隊(HS)が各1個で固定翼機58機、回転翼機8機(推定)というのが戦力の概要である。なお、本来の戦闘攻撃飛行隊の保有定数は12機*1だが、海軍・海兵隊戦闘攻撃航空部隊の統合(兵力削減)計画であるTAI(Tac Air Integration)計画に伴って各飛行隊とも定数が10機に削減される計画があり、2009会計年度までに順次実施するとされている。しかし、X14という末尾「14」のモデックスがあることから*2、今回のニミッツ搭載飛行隊は12機の定数で運用されているものと考えられる。もっとも、VMFA-232については航空ファン2005年7月号ですでに定数を10機に削減済みとの記述があり、「314」のような大きなモデックスが存在することについては、かなりの変則的な欠番が生じている可能性もある。
いずれにしても、冷戦期、一般の出版物などには「100機」などとざっくり書かれていたアメリカ空母の搭載機、当時はF-4/F-14×2個隊=24機、A-7×2個隊=24機、A-6×1個隊=15機、EA-6×1個隊=5機、S-3×1個隊=10機、E-2×1個隊=5機、これに超大型の偵察機、RA-5CビジランティやRF-8Gクルーセイダーを数機、さらにこれまた超大型の電子戦偵察機、EA-3Bスカイウォリアなんかを載せていたのだから、ヘリを合わせれば限りなく100機に近く、現在の倍近い飛行機を載せていたことになる。ずいぶんデッキ上のスペースには余裕ができたのではないだろうか・・・

実は、私は2006年9月の"TOMCAT SUNSET"で、通常の訓練飛行を行うVFA-41の機体を結構目にしている。VFA-41は太平洋艦隊の飛行隊であるので、ホームベースはカリフォルニア州NASリムーアであるが、"TOMCAT SUNSET"記念式典に参加したダブルナッツ、NH100の他にも何機かが、北米大陸を隔てた反対側、バージニア州NASオシアナに飛来して通常訓練を行っていた。すでに1年半近く前のことになるが、シリアルを調べたところ撮影した機体に関しては移動が見られなかった。というわけで、今回ニミッツに搭載されて来日したNH111(Bu.No.166465)の1年半前の姿を・・・

というわけで、それではデッキ上のレポートをご覧頂こう。まず、先端右舷側からNH410(Bu.No.163779)、NH406(Bu.No.163769)、NH305(Bu.No.不明)、NH303(Bu.No.不明)、

NH400(Bu.No.不明)、NH315(Bu.No.163150?)、

NH301(Bu.No.162423)、左舷側はNH107(Bu.No.166462)、NH111(Bu.No.166465)、NH203(Bu.No.166433)、NH112(Bu.No.166452)、NH202(Bu.No.不明)、NH113(Bu.No.不明)・・・

オシアナを離陸に向けてタキシングするNH107。

今回大注目の第3飛行隊、VMFA-232のCO機、NH301。ダブルナッツの300はさらに派手で、まるでVFA-102ダブルナッツと見まごうほどの一面赤の尾翼を持つそうだが、フライトデッキ上には見当たらず。しかし、こちらもこちらでなかなか派手過ぎずツボを押さえたデザインで、いいんじゃないでしょうか。
VMFA-232は、「M」=Marines―海兵隊の文字が表すように、陸上基地をベースとする海兵隊の飛行隊である。
ホームベースはカリフォルニア州サンディエゴ郊外のMCASミラマー*3。所属は本来は3MAW/MAG-11(第3海兵航空団・第11海兵航空群)だが、前述のTAI計画に基づいて2005年5月〜11月のニミッツのディプロイメントからCVW-11の第3飛行隊に加わり、今回が空母航空団のメンバーとして3回目の航海となる。
1989年に機種をF-4SファントムIIからホーネットに転換して以来、ニミッツとの2度目の航海までは装備機材はF/A-18C/(N)・ナイトアタックホーネットであったが、2007年4月〜9月の2回目の航海ではどこか海軍の飛行隊に新しい機材を譲ったのか、A形にC形のAPG-73レーダーを組み合わせたA+形に転換(一つ前のモデルに戻ったことになる)、今回のクルーズでも同じくA+形を使用している。読みとることのできたシリアルから察するに、おおよそ1983会計年度のロット7・1984年度のロット8の機体で、すでに同期はデビスモンサン*4送りになったりゲートガーダーになったり、例の横須賀のトムキャットのように空母デッキ上のハンドリング訓練用のドンガラになったりしたものばかりなのに、空母に展開する第一線部隊がこれでいいのか!?wというような顔ぶれ・・・不憫じゃ〜

同期のロット7の「上がり」の姿。オシアナの「アビエーション・パーク」に展示されているF/A-18A・Bu.No.162454。マーキングはVFA-87"Golden Warriors"。この飛行隊もC形からA+形に先祖返りした組で、ゲートガードに機体供出してる場合か!?と突っ込みを入れたくなるが・・・
また、VMFA-232はかつてハワイのMCASカネオヘベイ・MB-1/MAG-24(第1海兵旅団・第24海兵航空群)をホームベースとし岩国の1MAW・MAG-15に半年ローテーションで展開する常連であった。MB-1/MAG-24には当時、現在は岩国常駐飛行隊となったVMFA-212も所属しており、以前はハワイでシスタースコードロンだったことになる。当時はカネオヘ組のVMFA-212・235・232が半年サイクルで順繰りにローテーションを行っており(これとサウスカロライナ州MCASビューフォートの2MAW/MAG-31からローテーションの1個飛行隊と合わせて戦闘攻撃機2個飛行隊がMAG-15の構成だった)、1年待てば岩国で再びやってくるのを見ることができた。とはいえ、私が遠くに出かけることができるような歳になった頃には、岩国のお決まりのローテーションも崩れてきつつある頃で、結局私はレッドデビルズの機体を見たことはなかった。というわけで、今回が分遣隊長と同じく初めての対面となる。
なお、現在でもそうだが、半年に一回遠く地球の裏側から太平洋を越えて十数機が大移動をするのはばかばかしい(負担が大きい)ので、実際は機体はそのままで塗装のみ塗り替え、人員のみが移動するというローテーションの形式を取っていることが多い*5

デッキ中部は右舷側NH212(Bu.No.166425)、NH207(Bu.No.16)、

NH403(Bu.No.不明)、NH612(Bu.No.不明)、

NH500(Bu.No.158544)、NH503(Bu.No.159908)・・・3機が駐機するアイランド前方の中部デッキだが、手前のダブルナッツNH500とNH503は整備中か翼を展開してフラップも降りている。胴体中央に搭載したALQ-99ECMポッドは低周波帯域対応の下側が大きく膨らんでいるタイプ。

そして、ブラック・エイセスのダブルナッツ、NH100(Bu.No.166455)だが・・・残念なことにアイランド横に駐機しており、このように機首が隠れてしまった。多分入港してからのプレス公開対応の配慮なのだろうが、寄船で撮ってる人間にはいい迷惑。そこで・・・

完全な姿の同機を紹介。この当時、機首はごらんのように普通のグレイ塗装だったが、最近レドームからドーサル・スパインに続く上面を黒く塗り分けたようで、上の写真でもちょっとその様子が窺える。なお、VFA-41の前身であるVF-41では、F-14トムキャットを受領した極初期、ニミッツとのコンビを組んで最初の1回の航海のみ非常に派手なマーキングをまとっていたが*6、当時でも珍しかったレドーム部分を前面グロスのブラックで塗る、いわゆる「ペンシルノーズ」と呼ばれる塗装で特に目を惹いた。今度のもペンシルノーズにしちゃえばいいのに・・・でもスパホにペンシルノーズは似合わないか。
左舷側はNH601(Bu.No.165816)、NH615(Bu.No.不明)、NH210(Bu.No.166427)、NH407(Bu.No.163751)、NH502(Bu.No.158030)、NH101(Bu.No.166456)、HH-60×3、NH302(Bu.No.不明)、NH601(Bu.No.不明)、

アイランド横にNH200(Bu.No.166434)、NH602(Bu.No.165828)、NH304(Bu.No.162443)、NH402(Bu.No.16)、NH106(Bu.No.不明)、NH214(Bu.No.166422)、NH314(Bu.No.162903)、NH615(Bu.No.164098 以上推定)・・・NH100以上に、まったく姿の見えなかったVFA-14ダブルナッツ、NH200は仕方ないのでこちらもオシアナでの姿をご覧頂こう。

また、NH314/Bu.No.162903は、なんと1986年にCVW-5が戦闘機部隊をファントムからホーネットに替えた際、初来日した時のVFA-195のNF411(後にVFA-195は第1飛行隊に移動してNF111となる) だった機体。オオ〜!21年半の時を経て日本の西端で再会というわけである。すごいね〜、いるもんだねそんな機体が。というわけで、写真は来日して間もない頃、まだモデックスが411だった頃、厚木で撮影したBu.No.162903。

後部は右舷側NH600(Bu.No.165649―ほとんどアイランド陰で残念ながら写真には撮れず)、NH401(Bu.No.163738)、NH102(Bu.No.166457)、NH104(Bu.No.166459)、

オシアナを離陸するNH104。

こちらはオシアナにアプローチするVFA-81のNH401。大西洋艦隊でのスーパー&レガシイホーネットの機種転換訓練を一手に引き受ける飛行隊であるVFA-106の大編隊がワラワラと何機も降りてくる中、最後に2機だけ降りてきたサンライナーズのホーネットを見つけた時、一緒に撮っていた人と思わず歓声を上げてしまった。ラッキ〜! なお、同隊は2008会計年度でF/A-18Eへの機種改変が予定されている。

左舷側はNH402(Bu.No.不明)、NH106(Bu.No.不明)、NH215(Bu.No.不明)、NH105(Bu.No.166460)、NH201(Bu.No.166435)、NH602(Bu.No.165828)。VFA-14のCO機、NH201には尾翼マーキング・テイルコードに色が入ったワンポイントのお洒落が光るデザイン。デッキ部分の手前には近接防御兵器のRIM-116RAMの21連装発射機EX-31が見える。

(中央)NH312(Bu.No.16)、NH304(Bu.No.162443)。NH312の下には両舷の後部エレベータ開口部を通して向こう側の海面が見えている。
この他、ハンガーデッキにNH300(Bu.No.162396)、NH103(Bu.No.166458)、NH206(Bu.No.166430)、NH204(Bu.No.166432)、NH110(Bu.No.166463)が確認できた。
というわけで、これでニミッツ入港編、艦とヒコーキのレポートは終了!オマケ編に続きま〜す。

*1:この他陸上基地に2機程度の予備機を保有するのが普通

*2:空母航空団の戦闘・攻撃飛行隊とその役割を受け継いだ戦闘攻撃飛行隊のモデックスは、通常00―ダブルナッツ―CAGと呼ばれる空母航空団司令機、01―CO―飛行隊長機、02―XO―副隊長機、以下03〜07・10〜13が振られる 08・09は欠番となるが、これは06と紛らわしいために避けられていると一般的に言われている なお、機種改変直後で機体の籍が転換飛行隊にある場合などは40番代などの変則的な大きな数字のモデックスが振られることがある 今回X14のモデックスの機体が見られるのは、本来陸上基地で待機する機体がクルーズに参加している可能性があり、その分本来の搭載機モデックスの機体が欠番になっていると思われる

*3:かつては海軍の太平洋艦隊戦闘/早期警戒機のホームベースで、映画「トップガン」の舞台となったことで知られる 海軍・海兵隊の部隊数縮小・再配置により海軍部隊は戦闘・攻撃機部隊がNASリムーア、早期警戒機部隊がNASポイントマグーに移転、ロサンゼルス郊外のMCASエルトロに駐留していた3MAW指揮下の各飛行隊が同基地の閉鎖に伴いミラマーに移転してきた

*4:砂漠に無数の退役した軍用機を並べ、一定のコンディションで万が一の現役復帰に備えて保管するAMARC―Aircraft Maintenance And Regeneration Centerの所在地 一般的には「軍用機の墓場」と認識されており、「デビスモンサン送り」といえば退役・スクラップ―本当は前記のようにスクラップではないのだが―を指す 時々週刊誌のグラフ記事などで地上に並ぶ無数の飛行機を見ることがあると思うが、あの場所である

*5:本国でのメンテナンスを必要とするIRANなどのタイミングで太平洋横断をするが、えてして部隊ローテーションのサイクルとは噛み合わないことが多い

*6:その後のVF-41は以前にも述べたことがあるが、海軍機のロービジ化に真っ先に呼応して非常に地味なマーキングで推移した