フランス艦隊デュプレクス出港

Blueforce2008-04-11

大雨のために1日遅れの入港となったフランス艦隊だが、さて出港もそのままずれるのだろうか?
木材埠頭も、遊びで運営しているわけではない。入港が遅れても、押さえてある埠頭が空いたままになっているだけだが、出港予定日の翌日から埠頭には着岸予定がある。日程を後ろ倒しにすることは多くの場合難しい。
というわけで、当初日程の通りと読んで、福岡からtamo太郎さんもやってきた。今回の寄港は、ミストラルが13日の出港なのに対し、随伴艦のデュプレクスは2日早い11日に出港してしまうため、本日は予定通りだったとしても離岸したシーンはデュプレクスしか撮れないが、もちろん当分遣隊としては随伴艦といえども落とすわけにはいかない。なんとしても気合いで撮る! しかし、相変わらず天気予報はあまり良くなく、前日は夕方から再び大雨・・・tamoさんとさぁや女史が投宿した浜松町で、焼鳥屋に入り作戦計画を練るが、予報では天気が回復するのは0900頃からとのことで、0800出港はどうなんかと、現時点では五分五分の賭け。このメンツの飲みはまあいつも盛り上がるのだが、明日も早いということで早めに解散。
ということで本日は0500過ぎ起床、0600浜松町で2人を拾い、0700前に現着。1日おきの若洲海浜公園である。昨夜来の大雨はほとんど上がったものの、時折まだ霧のような雨粒が降り、一応傘を持って出るがあまりひどいようだとレンズ交換もままならない。おまけに肌寒く、出港側の撮影ポイントである防波堤の海釣り公園に着いても意気は上がらない。

おまけに、出港予定時刻の0800が近づいても、一向に曳船が姿を見せず、先に出港するはずのホストシップ、「はまぎり」と(恐らくミストラルに付き添って本日は残ると思われる)「きりしま」を結ぶ舷梯の幕も取り外されておらずどう見ても出港する雰囲気ではない。こりゃ・・・やられたかな。1日先延ばしにされてしまったら、私は土曜だからいいが九州から来たtamo太郎さんは目も当てられない大悲劇。しかし、遠く本国から来た艦隊を岸壁で見送る大使館や友好協会などの人々も見当たらず、これは残念だが・・・と待ち続けた1時間半後!

「はまぎり」と「きりしま」の舷梯が外され、煙突から白煙が上がった。先程まで閉まっていた「はまぎり」のヘリ格納庫シャッターが開いて、SHが姿を見せている。いつの間にか、曳船もあちこちから三々五々寄ってきた。「はまぎり」の出港ラッパが鳴る。っしゃ〜!来たで〜!
0940過ぎ、「はまぎり」出港。離岸したところで時計回りにその場回頭を行い・・・

0950、いよいよ両舷前進半速で動き出す。2時間近く出港が遅れたことで、怪我の功名、0900過ぎより予報通り天候も急速に回復し、空には晴れ間も覗くようになってきた。定刻なら小雨混じりの天候だっただけに結果オーライ。入港といい、最近ツイてるぞ・・・

デッキ上の乗組員と会話が交わせるような近距離を、スペイSM1Aのエンジン音を響かせて防波堤を通過、沖に出る。搭載のヘリは大湊の25航空隊所属のSH-60J(8242)。左にちょっと見えている船は、翌日の入港を控えて錨地で待機中の砕氷艦「しらせ」。

予定を2時間以上過ぎた1010、デュプレクスも回頭を終えてついに動き出した。たった2泊3日の滞在で期間中天気もずっと悪かったが、乗組員は東京でいい思い出を残せただろうか。

さあここからは恒例装備品チェ〜ック!に移行してみよう。まずは直径100mmのストローで膨らました大きなシャボン玉、お台場の目玉テレビ局をバックに、ユル〜イ登舷礼で並ぶ乗組員とモデル1968-II・100mm55口径単装砲。クルーゾ・ロワール社製のフランス艦艇伝統の対地・対空両用砲で、初期のモデル1953は1〜2名の操作手を必要とする有人砲であったが、当艦のモデルは無人化が図られている。

全体配置はこんな感じ。入港時のレポでも触れたが、煙突の前にはF2タイプA・20mm単装機銃が見える。その左上に見える白い物はタゲMk2チャフ/デコイランチャー。

艦橋上部には、明らかに後ほど追設された上部艦橋?がある。外から見たところ、ちょっと狭い監視小屋?のような感じで内部には何人かが見えるのだが、さらに中央部の突起、監視ブースのような所に人がすっぽり1人入っているのがわかる。無茶苦茶景色が良さそうだけど、戦闘時にここには座りたくないなあ。ウイング後部に見えるのはサイレックス・チャフランチャー。

艦橋上部の各装備。最前列は民生品の航海レーダーと思われるが、その右にあるのは100mm砲射撃管制用のDRBC32Dレーダー。大きな楕円形のアンテナはDRBV26二次元対空捜索レーダー。両脇にあるクリーム色のレドームはフランス独自の軍事通信衛星であるシラキュースSyracuse2衛星通信アンテナ。

メインマストは、トップのARBR17・ESMアンテナから始まり、そのすぐ下、前部に突き出ているエニグマ・方角探知アンテナ、中段の比較的大きなアンテナがDRBV51C・二次元対空捜索/対水上レーダー、その下、前部に突き出ているのがARB-33ジャマーという構成になる。DRBV51Cは5番艦のプリモゲPrimauguet D644からは対空は"シー・タイガー"との異名を持つDRBV15Aに換装されている。

煙突後部に背負い式に装備されているSM38エグゾセ艦対艦ミサイル。エグゾセは我々の世代にはフォークランド紛争でシュペル・エタンダールと共に有名になったフランス・アエロスパシアル製の艦対艦・空対艦ミサイルのシリーズで、当日記でもパキスタン海軍のタイプ21級などで紹介している。発射機は特徴的な角形で、改良型のMM40ではハープーンのような円形キャニスターとなる。次発装填はないから、通常4本×4=8発を装備するハープーンと比べるとミサイル搭載数は半分となるが、さすがに少な過ぎると思ったのか3番艦モンカルムMontcalm D642からは8発装備に、またミサイル自体も改良型のMM40となった。

後部ヘリ甲板の上部には個艦防空システムであるクロタル艦対空ミサイルの8連装ランチャーを装備する。こちらは昨年12月に来航した中国海軍の駆逐艦シンセンにも装備されている(同艦のものは中国でライセンス生産したHQ-7だが)が、ランチャーが当艦のDRBI51C誘導用レーダー一体型とは異なる分離式で形態が異なっているので見比べて頂きたい。しかし、いつも思うんだが、このレーダー一体型なんか宇宙ステーションみたいな格好してますよね。

出港時は、後部ヘリ甲板に搭載機のリンクスを出していた。搭載能力(ハンガーの大きさ)自体は2機搭載可能だが、当然(?)ながら今回の航海では1機のみの搭載だったようである。

艦尾に装備するのはDUBV43B・VDS(可変深度ソナー)。対潜艦でも曳航段列ソナー・TASSが主流になっている現代の軍艦ではVDSはすでに一昔の装備、海自で現在VDSを装備する艦はなく、当級でも5番艦からはTASSになっている。なお、ハルソナーはDUBV23となる。

防波堤を通過し東京港東航路を南下、先行する「はまぎり」の後を追うデュプレクス。就役時にはなかった(と思われる)、イギリス海軍タイプ42級バッチ2に見られるような船体の補強?ブリスターが目立つ。さて、ここからが追撃戦になるわけだが、しばらく遠ざかって行く2隻の姿を見ていたら、「はまぎり」が艦尾から盛大なウエーキを引いて、見る見るうちに遠ざかりはじめた。なんか・・・妙に速くない?なんであんなに急ぐ必要があるのだろうか・・・

ところ変わって、ここはなぜか横須賀。塚山公園の上から見下ろす私の前に、アーレイ・バークミサイル駆逐艦カーティス・ウィルバーUSS Curtis Wilbur DDG-54 が見える。
実はデュプレクスは出港後、そのまま横須賀に再入港するという話があり、ここは当分遣隊のお家芸である2カ所責め、1回の撮影行で2度おいしいという「グリコ作戦」を当然発動したのである。当初はtamoさんが、水上バスからミストラルを撮りたいというので、それなら昼前まで一帯でゆっくりできるのだが、さんざん迷った挙げ句、「やっぱ横須賀行こ」。それなら急がなきゃ! といっても、ミストラルを1枚も撮らずに帰るわけにもいかないと、若洲の岸壁に着けているミストラルが頭から撮れる定番の場所に移動して数枚撮った後、新木場から首都高に乗る。
渋滞もなく、相応のペースで走れば先回りは充分可能なのだが、なんのかんのと新木場でもたついたのと、妙に急いで沖に出ていったのが気になる。通常、湾岸を走っていると、東扇島を抜けて東京湾内が見える所に出た時点で出港していった艦が真横に併走する形になるのだが、今回もここまでは予定通りながら、「おいウエーキがすごいぞ!」こちらはハンドルを握っているのでそこまでは良く見えない。しかも、「はまぎり」は予定よりちょっと早いペース。ったく、人体の2カ所責めならすぐ隣だから簡単だが(謎)、こっちの2カ所責めは70kmも離れてるからな〜・・・ま、地球を人体に例えたら隣みたいなもんか・・・
ベイブリッジで完全に抜き、一安心したのもつかの間、最短コースを取る船舶に対して、湾岸線本牧磯子のところで海岸線に沿って忠実に回り込む線形になっていて、5倍近い速度で走っているはずなのにIHI-MU横浜工場のひゅうが君が見えてくる辺りでは再び前に出られてしまった! おいおいマジかよ、湾内何ノットで走ってんだ!? 幸浦でトンネルに入ってしまえば、後は横須賀ICで降りて本町山中道路のトンネルを抜け、撮影ポイントに着くまで海の様子はまったく窺えなくなる。間に合ってくれ、間に合ってくれ〜!
撮影ポイントに着いたところ、どうも様子がおかしい。吉倉もアメちゃんの方も、来航艦が入れるようなバースの秋具合ではないのだ。おまけに、いくら入港でちょっと時間がかかるとはいえ、あのペースで抜いて行った2隻がいつまで経っても見えてこないのだ。
・・・ここで、私にはちょっと企みがあった。テレコンを使えば、駆逐艦クラスでも塚山公園フレーミングいっぱいの後ろが抜けている写真が撮れる。テレコンがないのでここで粘るという2人とは別行動にしてもらって、塚山に行ってみた。展望台からは羽田の沖から観音崎の曲がり角まで、東京湾内のすべての船舶が見渡せる。ところが・・・いくらファインダー越しに探しても、軍艦の姿がどこにもないのだ。
おかしいだろ!いくらなんでも!船が100km/h出せるか!? 観音崎をさっさと曲がって、外海に出ていったというのか? しかし、待ち続けること1時間近く、さすがに・・・その事実を認めざるを得なかった。あの、若洲で防波堤を通過して出ていった時の、不自然な早足はやはり気のせいではなかったのである。でもなあ、いくらなんでも観音崎をすでにクリアしていたとは・・・また、横須賀寄港は結局ガセ(まあ、直前で予定が変わった可能性もあるが)だったことになるが、次の寄港地に予定されている上海に行くまでにはミストラルと合流するはずだし、2日も前に沖に出る理由もよくわからないが・・・
今回は、出港後の親善訓練等は予定されていないので、待っていればシンセンの時のようにホストシップは戻ってくるかと思いつつ、「はまぎり」は大湊の艦なので、そのまま帰ってしまうと思われる。というわけで、ここ塚山で撮れたのはこのカーティス・ウィルバーのみ。

ここからは失意の帰路・・・というか、それはそれで盛り沢山のフネ三昧を楽しめるわけである。まず最初は長浦港、相変わらず姿を見ることができる退役ミサイル護衛艦「たちかぜ」(と、かつて呼ばれていた船体)。