地下鉄の作り方

subway Marunouchi-line type300 EMU

某線のトンネル工事現場を見学させて頂けるというので、喜んで行ってきた。
一応背広を着ていったのだが、トンネル内は水たまりもあり、服が汚れるのでということで、現場事務所で作業服に着替えることに。私も汗かきなんで、7月にしては異常なほどに涼しいものの、まあ助かるといえば助かるんだけど・・・こんな所まで来て、披露宴会場みたいだけどいっちょまえの現場職員の出来上がりである。
さて、事前のレクチャーを受けて、いよいよ地下に潜るが、普段上の道路を通っているところを、一歩下がればそこは別世界。もうこんなに掘れているんですか! とはいっても、駅部の掘削率はかなり進んでいるものの、各駅間のシールドはまだ発進したばかりか、まだ発進準備の段階に留まり、全体の工事進捗率は現在約50%台の半ばほどとのことである。
既設路線や施設を縫うように掘削しなければならない、線内随一の難工事となる繁華街直下は、シールドも南に向けて発進したばかり、裏側から見せてもらったが本日で19リング(1リングは7つのセグメントで構成される断面の輪切りの長さで、直線部は1m60cmとのこと)まで掘り進んだところ。大体1分で2〜3cm進むそうで、約900m先の隣の駅には11月に到達するらしい。
その後、開削で造られている駅部に移るが、とにかく深いこと深いこと・・・斜めに交差している道路の下に埋設されている配管類が空中に浮いていて、交差の角度と同じに斜めに上空を横切っているのが見える。地表の薄い皮を裏側から見るのはなんとも変な気分・・・さらに進むと、トンネルが宙に浮いている。
これがいわゆるアンダーピニング工法というやつで、新しく掘削して空間が空いてしまった地下に、杭を打ったりやぐらを組んだりして荷重を受け替えるのである。しかし、ビルで言えば4階分にも相当しようかという地下空間の上に、トンネルの外皮が下半分だけ張り出しているという光景は・・・電車が通ると「ゴーッ」と音もする。まさかトンネルのコンクリートも、地中に埋められて約半世紀、空気にさらされて下半身は宙に浮くとは夢にも思っていなかったろう。もちろん、駅が完成してしまえばまた埋め戻されてしまうのだが・・・ここだけで約5,000tの荷重を下で支えているらしい。満載状態の「あさぎり」型1隻ほどの重さか〜。重いんだか軽いんだかわからん例えだな〜。
その後別のルートを辿ってドアを出ると、アラ不思議、そこは宙に浮いているとは夢にも思わない単なる地下通路だった。何も知らず人々が忙しく通り過ぎて行く。その中の誰かを捕まえて、ドアから外側を覗いて見せたら、腰抜かすだろうな。いや、マジで高所恐怖症の人にはお勧めできないツアーです。
そのすぐ横にある地上への通路を歩いて行くと、そこが先程キャットウオークから見た宙に浮いている鉄の箱だったことに気づく。なんか足の裏がこそばゆくなってきた・・・直角に曲がって階段となり、数段目で鉄製の滑り止めシートが貼られた踏み段が石に変わった、ここが空中通路から実の詰まった地下構造物との境なのだ。地上に上がれば、いつもの街の喧噪が広がっていた。ヘルメットを脱げば汗びっしょり。今はツルハシで掘るわけではないけれど、シールドマシンの周辺は大変な高温多湿環境。夏はさぞや大変なことだろう。
その後背広に着替えショバを変え、慣れない懇親会なるものに参加させられてきたが、会議室で前を向いて座って話を聞くだけ、ペットボトルのお茶が1本、のような状況を予想していたのに反し、なんと料理も豪勢な立食パーティである。こりゃこりゃ、また場違いな所に来たもんだ・・・しかしせっかくの機会なので、ローストビーフを頬張りつつも、普段お会いすることもないシャチョーサンをはじめ偉い方々と緊張しながらもいろいろ興味深いお話しを伺ってきた。ま、その辺はナイショ。