"SYBIC"フランス国鉄BB26000形

type BB26000 E-lok of SNCF

BB26000形。1988年より量産が開始された、フランス国鉄の標準機である。
半導体素子の大容量化が進み、鉄道車両への応用が各国で盛んになってきた1970年代中期以降、三相誘導電動機の採用が主流であったヨーロッパ各国に対して、フランスは当時の技術レベルで大容量・低スイッチング速度の素子とのマッチングが良く、大出力化に適した同期電動機を採用した電気機関車を整備する方針を取り、いくつかの試験車両によるデータ収集の後、量産機BB26000形が誕生した。
フランス語で同期電動機・交直流を意味するSYnchrone et BICourantの頭文字を取って"SYBIC"とも呼ばれるBB26000形は、重量90t・軸配置Bo-Boの4軸、パリ近郊などの直流1,500Vと幹線の交流50Hz25,000Vに対応した複電源仕様で、5,600kWの出力を発揮して最高速度は200km/hと、まずは当時のヨーロッパを代表する高性能機関車である。総計で234両が製造されたが、大出力で高速旅客・貨物両用の牽引をこなし、その技術的な成功により、当時開発の進んでいたTGVアトランティック(大西洋線)はPSE(パリ南東線――第一世代のTGV)の直流電動機に代えて同期電動機を採用することとなり、その後のTGV-R、デュプレックス、PBKA(タリス)に至るまで、同期電動機で製作されることになった(ファミリー中ユーロスターのみは誘導電動機)礎を築いた存在としても、その功績は大きい。
私が最初にヨーロッパに行ったのは1994年のことだったが、降り立ったのがドゴールで、最初の晩は右も左もわからず、やっと(パリ)リヨン駅近くの宿に着いたのは着陸してから何時間も経ってからだった。この時は本当に泣きが入り、鉄どころの話ではなかったのだ。

翌朝、実質ヨーロッパ第1日目、昨夜の涙目もどこへやら早速駅に繰り出したのだが、まず最寄りのリヨン駅構内に入って、初めて見たヨーロッパの機関車・・・あの感激は今でも忘れられないなあ。これがBB26000か〜! 本当にこういう世界がこの地球上にあったんだ、としばし茫然と立ちつくしてしまった。隣には今となっては見ることができない旧塗装のTGV-PSEが。なぜかカマが頭端側に蝟集していて、列車が出ていくのをまだ数十メートルしか離れていないのに追いかけて走り出したり、2両でちょっと離れて停まっていたCC7100が突然動きだし、グイグイ押してバッファをいっぱいにまで縮めて停めたのにもびっくりした(なんであんなことをする必要があるのだろう)。

スタイルはそれまでのSNCFスタイルであったCC6500形に代表されるゲンコツスタイルから脱却して、外側に軽く折った「く」の字スタイルとなった。時期的にはBB26000の方が先だが、JR貨物EF200にもよく似ている。というか、腰部にコンビで装備した前照灯と一段凹んだデザイン処理など、ギリギリに思えるのだが、日立のデザイナーはどういうつもりだったのだろうか。ま、私しゃEF200も好きだから別にいいけど・・・(余談だが、この写真後ろにピギーバック(トラック積載)貨車のクキ1000が写っている。今となっては貴重な記録だね〜。しかし、出力でいえばEF200の方がBB26000を上回っているとは、さすがJR化直後は志の高かったこと!)。

その後、2年続けて西ヨーロッパをあらかた回ることになり、それぞれの国に強烈な個性を放つ魅力的なカマを見てきたが、そうするとあまりに標準機然として、どこにでもいてスタイルもおとなしめのBB26000は空気のような存在になってしまい、カメラを向けることも少なく、あまり写真も残っていない(まさに日本でいえばEF65PFのようなもの)。もともとが乗り鉄旅行だから、駅撮りが中心で、線路端で撮ったのはタイトルカットに上げたGonesse-Arnouvilleで撮影したものが唯一のカットである(1月28日の日記で使ったTGVのカットと駅の反対側、パリ方で撮ったもの)。しかし、やはりなんといっても最初に見たヨーロッパの機関車、私にとっては「初めてのひと」だけに、自分の中では大好きなRe6/6や460、Dm3、E656などのアクの強いカマとは一線を画した存在で、なぜか気になる存在である。だから、一番好きなRe6/6に次いで、日記での欧カマ紹介第2弾として取り上げさせて頂いた。ま、今年は「Blueforceにおけるフランス年」ですから。
その後、ヨーロッパ全土を覆う鉄道改革の波はフランスにも押し寄せ、SNCFは完全民営化には至らなかったが上下分離や地域、客貨ごとの経営分割などもあり、BB26000一族も1999年の改番で6桁形式番号化、また塗装変更、所属の分離なども行われた。昨今では新世代のプリマやアストリド系列の台頭もあり、もはや最新鋭機でもないが、これからも中堅客貨機としてその活躍が見られるはずである。