サンレモでイタリアの電機 E656形に乗る

type E656 E-lok of FS

マルティニのデルタがブイブイ言わせていた頃のWRCしか知らない(205T16の時代よりはチョト後)私は、今のスケジュールや開催地を言われてもピンと来ないのだが・・・
モンテで始まるのは今も変わらずいいとして、それと並ぶ伝統のサファリ、最終戦RACはタイトルとしては今はない。雪と氷のスウェディッシュ、灼熱の「悪路ポリス」と言われるアクロポリスターマックの代表格ツール・ド・コルス、ワークスは誰も出ないアイボリーコースト・・・残っているものもあれば、「え!?こんな国で!?」というのもある。もちろん、日本もその一つ。昔からやるなら北海道しかないだろうとは思っていたが、よりによって私に縁が深い帯広一帯でやるとはね。中札内辺りで牧場始めてたらさぞや観戦には便利だったろう。

今は消えた伝統の一戦で、忘れてはいけないのがサンレモラリー。現在はFIAのプロモーション力が大きくなった、という解釈でいいのかな、最近内情までは知らないので良くはわからんが、かつてはワールドシリーズになる前から存在していた地元クラブ開催のラリーを起源として、タイトルに組み入れられたイベントというのは少なくなった。スケジュールを見ても開催地の国名を冠した大会ばかりが並んでいるようだ。
大体、既得権というか、サンレモとモナコは鉄道で33km、各停に乗っても40分ほどの距離で、一応世界選手権は1か国で2大会開催は不可という規定はクリアしているものの(まあ、これも政治的なしがらみでしばしばないがしろにされるのだが・・・今あるのか?この規定)、開催地としてはあまりに近すぎるので、他に散らしたいという意向で消えたのか、その辺は定かではないが・・・

そんなサンレモの駅に降り立った時、いきなりイタリアでも族車!?とびっくりするようなデルタのエグゾーストが聞こえてきたのは、以前2004年9月5日の日記で紹介したように偶然草ラリーを開催していたからなのだが、チェックポイントで次から次へとやってくる名車を楽しんだ後、市内をぶらぶら歩いて駅まで戻ってきた時、ちょうど停まっていた列車の写真を撮っていたら、機関車の運転台から声をかけられた。
もちろん、イタリア語なので何を言っているのかはわからない。「ア〜ジャポネーゼ、ジャポネーゼ」と言ったら、英語にしてくれた。といっても、西欧の中では英語が通じない方の部類に入るイタリアのこと、流暢な喋りではなく、マカロニイングリッシュとでも言えばいいのだろうか、我々と同じようなたどたどしいものだが、それがかえって助かる&親近感増幅。日本から機関車撮りに来たんだ、と言ったら、「乗ってけ」という。えっ!? 乗ってけ!?
40〜50年前ならいざ知らず、日本で勝手に客を運転台に入れたら、大変なことだ。最近でも某大手民鉄がその件でマスコミを賑わせたのは記憶に新しい。で、外国はその辺フランク&アバウトだと聞いて行ってみたのだが、ここまで声をかけてくれる運転士など皆無だった。特に南欧はなんでもありだと思っていたのだが、案外そういうことはなく、やっぱり来てみないとわからないな、と内心思っていたのだ。ま、少なくともヨーロッパにはそういうことはないな、と・・・しかし、その運ちゃんは、2人乗っていて便乗のようだったが、私のカメラバッグを上から引き上げてくれて、早く乗れ、早く乗れ、という。
カマは当時イタリアの標準機、6軸で2連接車体といういかにもイタ車レイアウトのE656。その運転台に、なぜか今私は立っている。そしてこの運ちゃん、どうも私と同じ血が流れているようで、助士席には航空雑誌やバイク雑誌が何冊も・・・え〜ヒコーキも好きなの!? ということで(たどたどしくも)話は盛り上がり、挙げ句「ベンティミリアまで乗ってけ」。

マジッすか!? しかし、こちらにも予定が・・・今夜はサンレモから夜行に乗って明日はローマだ。そんなに列車は何本も走っているわけではない。荷物は駅の手荷物預かり所に預けたまま。帰ってこれるかなあ*1・・・運転台で急いで時刻表を繰ってみる。まあ、見たところたかだか15分の距離だし、少ないながらも帰りの列車も何本かある。「荷物預けてる?大丈夫、ベンティミリアまでだよ、帰ってこれるだろ。」じゃ、お言葉に甘えて、ということで、ついに夢のような運転台添乗という体験をすることになったのだ。
続く

*1:これがイタリアではなにげに曲者 営業時間は2200までとなっていたが、この国の通例として万事いい加減で、係のおっさんがいなければそれで終わりだし(さっさと帰ってしまう可能性大)、いても最悪「今日はもう終わりだから出せない」とか意味不明のことを平気で言う。日本のように2200までなら2159に行けばいいや、という常識は通用しない。従って2時間位までに引き取らないとここで余計に1泊しなければならないこともある。ラテン系の国で駅の有人預かり所に荷物を預ける場合は充分注意のこと。