トムキャット引退式典に向けて渡米決定

お前はなんで、戦闘機なんか好きなんだ？
戦闘機なんてこの世になくたって、死にはしない。いい大人が他に覚えなけりゃいけないこと沢山あるのに、エンジンやレーダーの形式を一生懸命覚えていったい何になる？　いつまでも子供みたいなことやってるね・・・
戦闘機がなくなったら、明日からJリーグのこと勉強して、mixi入ってPSP買って、オレンジレンジのCD買って表参道ヒルズをぶらつこう。あ〜平和だな楽しいな、今度はゴルフも始めてみようか、財テクだって大人のたしなみ、携帯買って株価チェック、これでみんなとおんなじだ、さよなら暗いわが人生、さよなら・・・トムキャット。
９月22日にオシアナで開催される、"Tomcat Sunset"まで、あとひと月を切った。３月に最後の戦闘航海を終えて、７月にちょっと予定外のクルーズを行ったようだが、すでにシスタースコードロンのVF-213はF/A-18Fへの転換作業に入り、唯一のトムキャット飛行隊となったVF-31による、F-14トムキャットのファイナルフライトである。
昨日、アメリカ、ノーフォークまでの航空券代を旅行会社に振込み、同時にホテルとレンタカーの予約も完了した。昨年と同じ、付き合いのある旅行会社に手配をしてもらったので、一見で入った店のカウンターでああだこうだ説明する手間もなく、一発検索、一発完了。しかし、そのウダウダぶりはいつも以上で、昨年のエアショーとほぼ同じ日程ながら、申し込みは半月以上遅かった。９月の中旬は連休絡みで、結構早くから飛行機は埋まってしまう。今回もとりあえず辛うじて空いていた１席を押さえてもらい、その後も空きを探してもらった結果、時間のいいUAの便が取れた。９月20日発、昨年とまったく同じ、1420発のシカゴ行きUA884便だ。オヘアで２時間のトランジットの後、ノーフォークには夕方1657着。
21日には夕方に士官クラブでのカジュアルな食事会があり、22日には午前中にファイナルフライト＆記念式典、そして午後からは再び士官クラブでフォーマルな食事会がある。現役・退役を問わず、トムキャットを愛するエビエータOBにより企画されたこのイベント、期間中はゴルフトーナメントやマラソン大会、パネルシンポジウムなどさまざまな催しが予定されているが、それらに私が行っても場違いなので（記念式典だって本当は場違いなのだが）、せめて食事会だけでも、と２回分は予約しておいた。最終日の23日には参加料75ドル！でフォーマル着用、事前に料理の種類をオーダーしなければならない夕食会もあるが、さすがにこちらには行く勇気はなく、そもそもこれに出たら日本に帰ってこられなくなってしまう。
私が生まれた時には、まだトムキャットは影も形もなく、物心つく前からの趣味ではないので、子供の頃は知らずに過ごしたが、忘れもしない中１での出会い以来、トムキャットはいつも私の心にあった。もちろん、「ひとときも忘れたことはない」とまでは言うつもりはないけれど、中学の頃は周りが松田聖子に夢中となるのと同じ、いやそれ以上にトムキャットのことで頭がいっぱいだった。それをキモいと嗤うのはどうぞご勝手に。もちろんいい大人の付き合いの中で堂々と公言できる趣味でないのは承知している。しかし、今同世代の人間で松田聖子に相変わらず夢中で、コンサートに行ったり部屋にポスターを貼っている奴がどれだけいる？　決して少年の通過儀礼、今にして見れは赤面モノの過去などではない。この四半世紀をともに歩んできたのだ。
しかし、他の同世代の戦闘機が、あと何十年飛び続けるのかわからないほど長寿なのに比べ、あまりに早過ぎる引退・・・2003年には、さすがにアメリカに行くでもないと一度お別れをしたものの、昨年のオシアナにはいてもたってもいられず、初渡米までして見送ってきた。しかし、当時の読み通り、本当のラストは2006年。そしてフィナーレは、まさにトムキャット飛行隊中のトムキャット飛行隊、VF-31"Tomcatters"によって演じられるのである。これに行かずにいられようか？
トムキャットの前に戦闘機はなく、トムキャットの後にもまた戦闘機はない。今、私が恐れているのは、24日、すべてが終わり飛行機が成田に降り立った時、私がどうなっているかである。生きていけないなどと言うつもりはないが、その日から・・・笑い事ではない、私の「トムキャット紀元」は終わる。相変わらず争いの絶えないこの世界で、トムキャットだけが世界中のどの空からも姿を消すという事実を、どのようにして受け入れるのかが想像がつかないのである。
トムキャットこそが戦闘機なら、トムキャットがなくなったら、戦闘機はどこにある？　戦闘機がなくなったら、俺の人生はどこに行く？　俺はなんで戦闘機なんか、人殺しの道具が好きなんだ？
ああ、明日からサッカーの選手覚えようかなあ・・・