熟母キティ横須賀出港

Blueforce2007-05-15

4月1日の桜まつりの時にはデッキ上もカタパルト保護の建屋などでとても即応状態になかったキティちゃんが、ようやくメンテナンスを終えて夏のクルーズに出るようである。
先週一度出港してすぐ帰ってきたらしいので、次の出港時期を一応チェックしていたのだが、15日1000と出たので反射的に明日は休み!と決め、さてどこで撮ろうかと算段を巡らす。一番お手軽なのは横須賀の某公園だが、時間的に真逆光で、恐らくこの間のインド艦隊のような結果になるのは目に見えている。大体、空母をあそこで撮ると左右が若干邪魔なのだ。
次にメジャーなのは超王道、観音崎灯台からの長射程俯瞰だが、ここもちょっと私の好みでは・・・真横からのアングル、あんまり好きじゃないんだよね〜。やっぱり一番好きなのは先日の佐世保レーガン撮った時のような「7・3」ともいうべき前がちのアングルなのだ。だとすると・・・後は、やったことはないのでどのような結果になるかわからないのだが、いわゆる「赤灯」という奴。
これはあまり詳しくは書かないが、まあ皆さん簡単にわかるだろうから、探してみて頂きたい。ここからだと順光で前がちの私好みの写真が撮れるはずだが、バックがうるさく、洋上を往く巨大空母の質感が出ないのと、員数が揃わないと連れて行ってもらえず、行ったら最長4時間半何もない所で迎えを待たなければならないという問題がある(あと、お代が若干かかる)。まあ、平日だけど俺1人だけじゃないだろうと、一度は腹をくくって分遣隊長も司令部詰めと決め、遂に俺も今度、上○屋でライフベストでも買って来にゃなんないかな、などと思いつつ就寝・・・
と思いきや!もう一度考え直し、海図やガイドとにらめっこ。第2海堡ならともかく、どうもハイリスクなんだよな〜。昨年の小樽のように某海猿団体が追い払いに来そうな気もするし・・・直前で来られるのが一番性質が悪い。とすると、残るのは・・・あれだ。

僕らの味方、東京湾フェリ〜!!
前にも書いたが、昨年の観艦式の時にはこのフェリーから浦賀水道航路を航行する自衛艦が見えるの見えないのとあちこちでモメて、挙げ句の果てにうちの本隊の観艦式コンテンツがリンクで貼られたりしていたが、私も空母の入出港で試したことはない。もちろんタイミングさえ合えば、諸先輩方がやっているように釣り船をチャーターするのと同じようなド迫力の絵がものにできるはずである。はずであるが・・・
当たればどのポジションよりも釣果がデカイ東京湾フェリーだが、全行程約11.5kmの中で、ほぼ中間地点・浦賀水道航路の南端である中央第1号灯浮標の所で出会わないと意味がない。光線条件を考慮から外しても、赤灯や最も距離がある観音崎からでも約2km、これ以上近づかないとフェリーに乗った意味がないのだ。
今回、キティの浦賀水道航路通過時刻は1000、しかしこれは北口基準時刻なので、観音崎やフェリー航路との直交地点での時刻を計算しなければならない。やったことがある人なら経験でわかっているのだろうが、さて見当もつかず・・・「北口」といっても、普通は磯子近くのいわゆるUNラインのことを指し、横須賀入出港船舶は当然こんな北まで行き来しないから*1、横須賀を出てから赤灯をクリアし、針路90度(真方位 以下すべて同)で航路にインしたと仮定して(中央第5・6号灯浮標の中間辺り)、観音崎変針点までは約8.5km、観音崎変針点から交点までは約7km、計15.5km≒8.37マイル(海里)。
距離が出ても、空母の速力を把握しないと意味がない。しかし、どうやって? あ!2005年8月20日観音崎で撮った写真があった。今は便利な時代で、昔撮ったポジをいくら光にかざしてみても撮影日時はわからないが、exif情報を見ることで正確な撮影時刻を2年近く経った今でも把握することができるのだ。

これで見ると、中央第1号灯浮標の横を通っているカット(後ろに東京湾フェリーが見えるでしょ ドンピシャで当たればここまで近づくのも夢ではないのだ)が1325時16秒、

東京湾観音とほぼ一直線になっているカットが1339時22秒、その差約14分。これを基に2点間の速力、いわゆるSOA*2を計算してみると・・・観音崎の針路145度から180度への変針点から中央第1号灯浮標までの距離は5km、すなわち60÷14×5=21.43km/h÷1.852≒11.57ノット。一般的な自衛艦で言うところの「原速」が12ノットであるから、まあ妥当な数値ではあるし、浦賀水道航路は速力制限区間で、最高速力は航路を横切る場合を除いて最高12ノットとされているので、その計算との辻褄が合う、というか、オービスに写るか写らないかギリギリの絶妙なスピードだ。
算定の論拠として、これは推定の余地がない動かしようがない事実であるから、まずはパラメータがひとつ減ったわけである。浦賀水道航路は巨大船の通航時刻が公表されていることでもわかるように(だから私のような一般人でも入出港を知ることができるのだ)、たとえ傍若無人な米海軍の空母でも、いや空母だからこそプレジャーボートのような勝手気ままな操船は許されず、割り当てられた時刻に一列に整然と航行することが求められる(入出港時刻自体が変更になることはもちろんある、というかしょっちゅう)。だとすれば、このexif情報から求められた速力のデータは、北航・南航の違いはあれど、浦賀水道航路における(障害物などがない場合の)所定の数値に違いない。
上記のデータを基にした計算上の所要時分は15.5÷21.43×60=43.4分。つまり、交点付近を1040過ぎに通過するということになる。

この結果を基に、一番近い時刻に現場を通る便を探すと、久里浜1005発の5便となる。が、久里浜発所要時間40分のフェリー、1040ではすでに金谷に入港間近、東側に回れば順光で撮れるとはいえ、ほとんど房総の沿岸だったら意味ないような・・・同時刻発の金谷便に乗っても、単純に機織りのダイヤだからその時間は久里浜港である。こちらは逆光になるし、金谷と違い久里浜は埠頭を周り込むようになるので、外海は見えなくなり、まったく乗る意味はない。
しかも、13日までなら3便運行だから45分ヘッドだったのに、14日から閑散期で2便体制の減便ダイヤになっているのだ。2日違いでタイミングの悪いこと・・・まあ半ば諦めモードではあるが、どんなに遠くても順光になるのは魅力的だし、いつもの観音崎で撮るよりは、と、今回は勉強に徹することにし、フェリーで撮影に決定! なんて、そんな計算を繰り返していたら、寝るのがいつもと同じ3時過ぎになってしまった。もっとも、赤灯に行くのではないから、1000までに久里浜に着けばいいので、0730に家を出れば楽勝だろうが・・・朝はサクッと起きて、分遣隊長の食事など支度をして本日もオープンで出発! 首都高を使うまでもないと判断し、三京―幸浦線―横横で佐原まで乗り、途中で横須賀に寄り様子を見ようとも思ったのだが、余計なことをすると無用のトラブルが起こると思い直し、フェリー乗り場まで直行。

アクアラインが開通してからというもの、休日でも閑古鳥が鳴いている東京湾フェリー、平日と来れば乗船客も数えるほど、上甲板は15人ほどがつかの間の船旅を楽しんでいる。見たところ同業者は1名のみ、ワッサワッサいるかと思ったのだが、若干拍子抜けで定刻出発。同業者の方と、どんなもんすかね〜なんて話し合っているうちに刑務所と少年院のある岬をクリアして、東京湾の奥の方が少しずつ見えてきたのだが・・・

オイ! もう来てるじゃね〜か!

なんと、予想は大きく外れて、すでに空母は目の前、間違いなく衝突コースである。こりゃエライことになった・・・さすがは大スターの登場、「左手に空母が見えま〜す」と船長による山田邦子ばり(古〜!)の船内アナウンスが流れると、それまでまったく気がついてもいなかった「カタギ」の方々も外の風景に目を向け、トップガンがどうとかステルスがどうとか戦艦大和がどうとか、にわかに盛り上がり始める。 こちらはとりあえず撃ち始めるが、この時点では真逆光ではないものの、西から東に向けて撮っているので、あまり光線状態は良くない。こっちが先に抜けてくれないと前からの順光にはならないが、この位置関係では苦しいか・・・と思っていると、同業者のおじさんが「いつも空母を先に行かせるんだよ」とのこと。まあ、あちらさんが増減速や変針をしてくれるわけもないから、当たり前なんだろうが・・・しかし、このPhotoの後部エレベータ開口部、反航するコンテナ船?が素通しの向こうに見えてるよ、スゲ〜カットだな・・・

ちょうど掃海艇、やえやまMSO301が北航してきて、目の前でキティとすれ違う。

今回が2度目の出港となるキティ、これも本航海ではなくもう一度帰ってくるともっぱらの噂だが、ハンドリング訓練用のオンボロトムキャもデッキ上には見えず、少なくともデッキは作戦航海モード。2次元対空捜索のSPS-49も、3次元対空捜索のSPS-48も回転している。デッキ上に斜めに立ち上がっている板状のものは、カタパルトから発艦する機体のジェット後流を上方に逸らすMk7・JBD(Jet Blast Deflector)。

キティにぴったり寄り添って周囲の警戒を行うのは横須賀海上保安部所属、23メートル型の巡視艇「すがなみ」PC87。

1022、艦首が浦賀水道航路の南端である中央第1号灯浮標を通過。船舶の交通ルールは右側通行なので、一直線に並んだ3個のブイのうち、中央の赤白の浮標と手前の緑1号灯浮標の間が南航用の航路、奥の赤1号灯浮標との間が北航用の航路になる。ここを越えればもう速力や針路の制限はないが、航路南端の位置通報点であるUSラインはまだ先である。

空母入出港時、所定の上空警戒を行うのはHS-14のダブルナッツ・・・ではなくてCAGバード、NF610(Bu.No.164460)。

結局、予想通り進路はこちらが譲り(そうでなければ本当に衝突コース!)、若干左に振る。ということで艦尾からの姿に移行。

普段はなかなかお尻を拝むことがないので、これはこれで貴重なチャンスかと自分を納得させる。艦尾に引かれている黄色い縦線が、着艦時の進入コース=アングルドデッキの中心線になる。ホーネットのエビエータは、まさにこのアングルで空母に近づいてくるのである。しかし、こうやって見ると、空母って本当に船としてはかなりいびつな形態してるのを実感しますな。

1030、上空警戒のSHが着艦。デッキ上の航空機第1号となった。後は離れて行くのみ・・・だが、同業者のおじさんが「止まってるぞ、ひょっとして戻ってくるんじゃないか」などとおっしゃる。止まってる? う〜ん、どうだろう、しかしその後は順調に沖に出て行き、右回頭して相模灘の方向に消えていった。

やっと余裕ができたので、お約束の分遣隊長の背後にフネを配したショットを。といっても、すでに艦影はまったくわからないほどに離れているが〔右上によ〜く見ればそれらしき影が見えます)・・・

1045、定刻で金谷着。当分遣隊は往復割引乗船券利用なので、1人+1匹でデッキに残る。同業者のおじさんは、「鋸山に行く」とか言って降りていってしまった。これはまた別の趣味で、艦船とは関係ないらしい(1200mm+デジ一があったら超長距離俯瞰写真が撮れそうだが)。ということで、もう慣れたもんだが、無人の船内で折返しを待つ。

当初の、精密な計算をする前に漠然と想像していたシチュエーションでは、帰路の便で出港直後に目の前、という感じだったので、帰りが勝負だったのだが、すでに空母の姿もあらかた見えなくなり、あとは気楽なフェリークルーズである。こんな早い時間の金谷発では、いよいよ観光客もおらず、半ば貸切のような状態でデッキを占拠。

しかし、ここでまた格好の被写体登場!巡視船「いず」PL31が南航してくるではないか。今度はこちらが交点に到着するのがだいぶ早く、先に横切ったため、超順光のバランスのいい写真を撮ることができた。今度は同業者1人もおらず、まるでちょっと気の早いひとり観閲式状態!

というわけで、約1時間半ぶりに無事ふうこ号が待つ久里浜港に戻ってきた。いや〜、後打ちになっちゃったけれど、それも今回は納得の大正解!殊に、事前の精密計算が役に立ったんだか立たなかったんだか、20分近くの誤差が生じたが、それも結果としては良い方に転び、標準タイムも習得することができた。結果から逆算すると、もし私の想定のポイントで1000だったら、速力は37km/h≒20.1ノットとなり、浦賀水道航路の航行としてはちょっと速過ぎる。而して、また逆算して速力が12ノット弱なら、25分だったら8.93km≒4.82マイル手前となるので、この場合の「航路北口」というのは、帰納すればやはり第三海堡の辺りのことを言うのだろう。
まあ、勉強以前に同業者のおじさん曰く「(北口通過時刻から)大体20分だね」とのことなので、やはり場数と経験が一番ということになりました。
この後は、せっかくの休みを有効に使うべく、いつものように厚木に赴くことにする。一日で空母も搭載機も別々の場所で一緒に撮ってしまおうという、世に言う「グリコ作戦」である、しかし、走り出して早々、天気予報通り空がみるみるうちに暗くなり、ゴロゴロ鳴り出した。助手席でコテンとなっていた分遣隊長がビクッと起き上がり、私の膝の上に乗ってきた。まあ通り雨らしいし、着いた頃にはやむだろう。それなら急いで行っても仕方がないので、16号を横浜まで北上することにして下道をシコシコ走って行くが、追浜の所で上空を単機のホーネットが飛んで行くのを発見!こういう時オープンカーは実に便利だが、こんな所を飛んでいくのは珍しいなあ・・・初めて見たわ。
金沢八景の辺りでついに本降りになり、屋根を閉める。その後、保土ヶ谷の辺りでものすごい大雨になり、雨粒が「バチバチ」と当たりだした。ヤバイ、ひょっとして「ひょう」?どこか屋根の下があったらしばらく停まっていた方がいいかも・・・と思っていたら、ピークは5分程度で少し小降りになってきた。保土ヶ谷バイパスに乗る頃にはやんできて、厚木に着く頃には一面の青空になっていた。

道順の関係で、本日はまず南エンドに着いたのだが、その瞬間、1442にd-backの100と106がフルバーナーで離陸!ちきしょ〜ルート4上がりだ、しかもこっちから見ていると、ルート4撮影ポイントのギャラリーに向かって思いっきり左に機体を傾けて、背中バックリをサービスしているのが見える。だが、まさか今日は空母までワンウェイで帰ってこないということもあるまい、こちらで待っていれば降りてくるはずだ。というわけでしばしの待ち。CVW-5は基地周辺自治体に事前通告のあった出港前の離着艦訓練、FCLPを11日で基本的に終えており、あとは出港まで静かにしている(といっても通例では2日位しかないが)のだが、どうも今回も若干変則的になっているようで、しかも硫黄島での訓練が天候不順により予定通り実施できなかったということで、厚木で補習授業をやるらしい。大方はP-3CYS-11がタッチアンドゴーを行っているのだが・・・

というわけで殿、まだNLPにはお日が高うございますが、ボチボチとフライトもある。1549、ほぼ1時間のフライトを終えてNF100が降りてきた。4月30日の大空中戦、岩国に続いて、なんか最近毎週撮ってるな〜。それも贅沢な話だぜ・・・その間、NF405が出てきて一度滑走路端まで来たのだが、何かのトラブルか戻ってしまい、1540頃に改めて出てきた。しかも・・・アイクロ3機(NF504、502,500)を引き連れている!あちゃ〜、読み間違い・・・しかし、まああれも降りは撮れるからいいか・・・

続いて、ウイングマンのNF106も着陸。

まだまだ現役、キャラバンのYSも気合いのヒネッたアプローチ!

左胴体側面に第1分遣隊のマーキングを描き込んだHSL-51のSH-60B、TA716がアプローチ。この辺りから、先程まで快晴だったのに、またさっきと同じようにみるみるうちに曇り出して・・・ポツポツと降り出した。車に避難して、何か降りてきた時だけ外に出る撮影を余儀なくされる。煩わし〜な〜! 大体、真っ暗で全然絵にならん・・・1624には簡単なチェックだけだったのか、短めのフライトを終えてNF405が着陸。

そして、プラウラーが戻ってきた。先に1機で帰ってきて何度もタッチアンドゴーを行ったNF504。しかしこの写真、後席のECMOが振り向いて手を振っているように見えるのは気のせい?今更1人しかいないギャラリーに手振ってもしょうがないだろ、ちゃんと前見てろよ!www
この後残りの2機も戻ってきたが、なぜダブルナッツも含まれているのにPhotoがないのかというと、500を撮った1コマ目でバッテリーが空になったというのは内緒ですまあいろいろありまして・・・
いや、今日も朝から長い一日であった。この後CVW-5は長い居残り補習授業が始まるのだが、それを見ていてもきりがないので、再び、そして今度は抜けるような青空の下、珍しく246経由で撤収。大和のスポーツセンター近くのコンビニでコーヒーを買い、屋根を開けたところ、1730位だったか、信じられない位の機数がバンバン上がりだした。それは車を走らせている間、目黒、長津田荏田近くまで続き、絶えることがなかった。通常はあまり立ち入らない基地東側、すなわち人口密集地の横浜市域上空を飛ぶ異例の事態だったようである。
フネ屋とヒコーキ屋の掛け持ち業者が体験した、欲張りな一日。

*1:通常横須賀港入出港の艦艇は浦賀水道航路の中央第5号灯浮標を回り込んで同航路より別れ・合流する 詳細は本隊の東京マーチス見学記を参照のこと

*2:Speed On Average