英仏豪艦艇一般公開

Blueforce2007-10-14

さて、PSI訓練参加英・仏・豪海軍艦艇の一般公開である。
久しぶりにほとんど毎週土日の横須賀通いだが、公開開始の1400にかなりの余裕を持って出かけた。若干早着だったので、最近素通りばっかりのヴェルニーに。そこで見た光景はあな恐ろしや・・・

まずハーバーマスターのwestには、フィッツジェラルドUSS Fitzgerald DDG-62とマスティンUSS Mustin DDG-89、さらに1隻タイコンデロガ級がメザシでつけている。eastにはマストを養生中の植木みたいに足場とネットで覆ったアーレイ・バーク級がもう1隻。

バース2にはラッセンUSS Lassen DDG-82、バース3にはマッキャンベルUSS McCampbell DDG-85、カーティス・ウィルバーUSS Curtis Wilbar DDG-54。さらに奥のバース6にはもう1隻?アーレイ・バーク級のマストが見え、計7隻・・・今第15駆逐隊何隻いるんだっけ!? ええと、カーティス・ウィルバー、ジョンS.マッケイン、フィッツジェラルド・・・おい外来じゃなかったら全部帰ってるぞ、もうクリスマスか!? まったくとんでもないことになってるもんで。タイコンデロガ級も1隻がいるから、横須賀母港の戦闘艦で出港しているのはタイコンデロガ級の1隻だけということになる。

カーティス・ウィルバー(右)とマッキャンベル(左)のアップ。フライトIの通算4番艦と、最初期の建造艦であるカーティス・ウィルバーと、フライトIIAの7番艦、通算35番艦のマッキャンベルの仕様の差異が見て取れる。以前も紹介したことがあるが、マッキャンベルは同じグループのマスティンなどと同じく前面のファランクスを装備せず、艦橋構造物後部、アンテナレドームの取付部が大きな台形の基台になっているのが特に目立つ。ブリッジウイング下のSLQ-32(V)2の取付も、架台の形状、本体を載せている脚の長さなどが微妙に違う。

いや〜すごいもんを見た、ここに見えているだけでそこそこの中堅海軍の全兵力に匹敵する戦力だよ・・・よ、吉倉に目を向けてみると、おや珍しい、Y1にははたかぜ型の2番艦、ミサイル護衛艦のしまかぜDDG172(第2護衛隊群第62護衛隊・佐世保)が。その奥にはきりしまと思しきこんごう型と、しらせの姿が見える。
まずは軽く前哨戦を終えて、30分前に現着。ちょっと余裕があったので(本当はさっさと行列に並べばいいのだが)、三笠公園に行ってみた。公開前、人が取り付いていない状態のヘリが撮れるのではないかと思って・・・昨日はすでにほとんど夜で撮れなかったので。
一度三笠の艦尾まで行ってみたら、逆に手前側に泊まっている貨物船が邪魔で見えなくなってしまった。ありゃりゃ・・・と思ったら、コンデジで写真を撮っていた外人さんが、三笠と一緒に写真撮ってくれと言う。
艦名は忘れたが、イギリスの艦船のキャップをかぶっていたので、乗組員かと聞いたら、若干要領を得ない答え。「Monmouth」ではなかったことは確かだったので、マニアかな?と思ったらその通りで、しかもロシア人でした・・・この人は見学はさせてもらえないんだろうなあ・・・

なんて、余裕ブッコイていたら、まだ1400前ながら桟橋には見学客?の姿が。おいおい、こんな所でのんびりしてる場合じゃねえよ!
横須賀新港のゲート付近は、すでに長蛇の列ができていた。うわ〜予想していたより結構長い・・・2時間しかないという公開時間のうちに、中に入れるのかなあ? おまけに、配布されていたチラシ、立て看板には「カメラ、携帯電話の艦内への持ち込みはできません。預かりとなります」といったニュアンスの注意が・・・あのさあ、何千人もいるお客相手に、どうせクロークやタグを用意しているわけじゃないだろうに、そんなことできるわけないじゃん? 本気だったら大混乱だぞ・・・
昨年9月の韓国艦隊一般公開の時は、全部で100人いるかどうかのお客で、本当に最初の20人位は舷門で荷物一切を預けさせられていた。その後なし崩しになったが、財布は持っているけどカメラも携帯も貴重品で、便所のスリッパじゃあるまいしもし誰かが持って行ってしまったらどうするつもりなんだよ、と。誰が言い出したんだ、イギリス海軍か、オーストラリア海軍か、フランス海軍か、防衛省か、外務省か? まあ向こうさんの主張をとりあえず載せただけなんだろうけど、イギリスなんかは本当に、場合によっちゃアメリカ以上にピリピリしてるから、本当にやりかねんな、でも預かった荷物の1割くらいは手元に帰ってこないだろうな・・・もう帰ろうかな?
手荷物検査の行列の間を縫って、外務省の職員が上記旨の注意と、「特にイギリスの軍艦はボディチェックが厳しく、アトランダムに実施することがありますので、ご協力をお願いします」とがなっている。俺は捕まるんかな・・・? まずゲートの手荷物検査は予想より早く突破し(受付で私の荷物をチェックしたお姉ちゃんが無茶苦茶可愛かった!!皆さん覚えてます?)、順当に岸壁に歩を進める。手前に泊まっている自衛艦には目もくれず、外来艦の行列に並ぶ。見たところ300人位?まあ、15分位だろう。さ、今日も行ってみよか!

手前から順番に小さくなっていく面白い配置の3隻は、昨日の入港風景で紹介したように、左からイギリス海軍のタイプ23級フリゲイト、モンマスHMS Monmouth F-235、オーストラリア海軍のアンザック級フリゲイト、パースHMAS Perth FFH-157、フランス海軍のフロリアル級フリゲイトヴァンデミエールFNS Vendemiaire F-734。ん〜いいよいいよ〜、がさつな(失礼!)アメリカ艦艇にはないオシャレさがたまんないネ〜!

モンマスは1988年度計画、ヤーロウ造船所で1989年6月1日起工、1991年11月23日進水、1993年9月24日就役の同級6番艦。母港はデヴォンポート。基準排水量3,500t、全長133m、全幅16.1m。6月15日の日記で紹介した現パキスタン海軍のタイプ21級の系譜に位置する、イギリス海軍のワークホースたる汎用(対潜重視)フリゲイトであるが、前2タイプが中央船楼型の船形を採用しているのに対し、一般的な平甲板型のスタイルになった。なお、艦名のモンマスとは南ウエールズ地方にある都市の名前で、「・・・の河口」を表すmouthが接尾語についているように、monnow川の河畔にあるが、なぜか海には面していない。
ちなみに、当級は1989年11月就役の1番艦、ノーフォークHMS Norfolk F230から2002年6月就役の最終艦セント・アルバンスHMS St.Albans F83まで全16隻が建造されたが、すべて艦名にイギリスの旧公爵領の地名が付けられているので、デューク級と称する*1こともある。また、3番艦のランカスターHMS Lancaster F229は、当初ハルナンバーは順番通りF232を予定していたが、「232」の番号がイギリス海軍では衝突など事故が相次いだ不吉な番号だということで、1番艦の1つ前にさかのぼってF229と付番されたというエピソードがある。名前はともかく、番号でゲンをかつぐとはアメリカ海軍などではあまり聞かない話ではある。
こうして、21世紀初頭には当初建造予定の23隻よりは少なくなったが、16隻が揃ったタイプ23級であったが、それもつかの間、2005年からは12番艦のグラフトンHMS Grafton F80を皮切りに1番艦のノーフォーク、4番艦のマールボロHMS Marlborough F233の3隻がチリ海軍に売却されている。これもイギリス海軍に良くあることで、造ってすぐに売り飛ばす・・・整備計画がいい加減なのか、よくこれで議会や世論で問題にならないもんだ。いや、問題になってるのかな?

水上打撃力は、1つ前のタイプ22級までがエグゾセ対艦ミサイルを装備していたのに対し、当級では現在の西側装備としては一般的なハープーンになり、キャニスターMk141は艦橋前に互い違いに2基設置されている。ちなみに、ドン曇りのこの写真ではほとんどわからないが、キャニスターは米軍色の黒みがかったグレイに塗られており(海自も同じ)、緑味が強い英軍艦の外装色とは明らかに違っている。
艦橋構造物はまるで三菱製の機関車のような特徴的なハト胸スタイル?ともいうべき、下に向かって逆傾斜をつけた形状だが、これももちろんステルス性を考慮したものである。高さはこの世代のヨーロッパ戦闘艦に共通して低く、上甲板からは2レベル上となる。ブリッジウイングの下にある架台は就役時にはなかったもので、載っているものも種類・用途は不明。水上デコイかなんか? 本体はアップで撮ったので、帰ってから判別できるだろうと思っていたのだが、プレートの文字が読み取れなかった・・・キショー!

備砲は前甲板に1門、、イギリス海軍標準のヴィッカース(現BAEシステムズ)製4.5インチ55口径砲Mk8だが、初期建造艦とは異なりステルスシールドの外形となったMod1になっている。

こちらは同海軍タイプ42級駆逐艦の前甲板に装備されたMod0。シールドが丸みを帯びているのがお分かりかと思う。

射程は約21.9km、発射速度は毎分25発と、Mk45に対して射程は若干短く、速度は若干高いという、口径の差なりの性能であるが、近年高性能推進薬を採用した改良型となり、射程は27kmに延伸した由。

砲塔はもちろん無人の遠隔操作式で、内部はこんな感じ。手前に写っているのは模擬用の弾体である。

メインマストはモノコックで、イギリス海軍では伝統的にこの形状が多い。

後方から見るとこうなる。基部の黒く膨らんでいる所が恐らくパックスマン製ヴァレンタ12RP2000CZディーゼル機関の船体内装備2基分(機関については、当級は非常に特徴の多い方式を採用しているので後で詳述します)の排気口になっており、黒煙で汚れるためか黒く塗られているが、上の方は煤が側面まで回り込み、結構汚れていて「設計ミス?」とのささやきがあちこちから・・・なお、左手前のネットで覆われている部分には、MSIディフェンスシステムズ製のDS30Mk2・30ミリ機銃が設けられている。これは従来装備していたエリコン・BAEシステムズ製の30ミリ機銃から換装が進められているもので、電子光学照準装置つきの遠隔操縦形である。シャイローの艦尾に装備されているMk38Mod2に対応した対小形水上目標用の小火器だが、実際機銃本体はブッシュマスターを使用しているようである。基部の両側にあるドームはSCOT 1C衛星通信アンテナ。

マストトップに載るのはE/FバンドのType996(AWS-9)Mod1・3次元対空捜索レーダー。

その下にはイボイボが気持ち良さそうな(?)全周にわたる突起は、恐らくタレス・ディフェンス製のUAF-1カットラスESMと、同じくスコーピオECMのアンテナ。

さらに下に下がった中段に装備されているのは、GSA8Aシーアーチャー30光学・電子照準装置 。モノクロCCDカメラ(45万画素)、IR映像センサー、レーザー・レンジファインダーがセットになったもので、4.5インチ砲の照準のほかにも目標探知や監視にも使用できる。右上のがCCD?ワイパーが見える。一番汚れているようにも見えるけど・・・

艦橋上部と後部ヘリ格納庫の上にはIバンド・L/MバンドのBAEシステムズ製Type911・シーウルフ艦対空ミサイル管制用のイルミネーターが設置されている。その前に見えるのはIバンドのケルビン・ヒューズ製Type1007航海レーダー(後方のパースのマストと重なっているので注意)。

撮影位置の関係で後ろ2隻がほとんど隠れてしまっているが、各艦のマスト比較。やはり艦の大きさが小さくなるに従って、マストも簡素になっている。

当初、見学は一定人数で区切って数人の水兵がつくツアー形式を採っていたようだが、その原則もだんだん崩れてグダグダになってきた。後はダラダラで乗艦となったが、あまりに連続して後ろから乗り込んでくるとさすがに対応できないということで、順次ストップ、一応20人ほどで固まっての乗艦となったが、前後をガードされて行動の自由もなく・・・というのではなくて助かった。昨年の韓国艦隊はほとんど追い立てられるように回ったので・・・舷門の所でもう一度チェックがあり、先程抜き打ちで非常に厳しい検査が・・・とおどかされたのは述べたが、結局誰もそのような目に遭う人はおらず、笑顔に迎えられての乗艦となった。なんだよ、結局原則一つも守られてねえじゃねえかよ、うるさいこと言ってんのどうせ外務省だけだろう?
さて、いよいよ乗艦してみましょう。

横須賀新港東側の1号・2号岸壁の向こうに広がるのが、今は閉館してしまったhideミュージアムがあった、一部ではいぬかぜ公園wwwwとか呼ばれているうみかぜ公園国道16号をずっと海沿いに走って行くと、防衛大学校がある小原台の山の下を通って、8kmほどで観音崎に至る。
私が基本的に艦艇一般公開にあまり燃えないのは、どうせ一通りの上甲板をぐるっと回るだけで終わってしまうからである。上甲板だけ見たところで、その艦の何もわかりはしないし、装備を撮るのだったら艦上からではかえって何も撮れやしない。ここまで紹介したほとんどの写真は乗艦前に岸壁から撮ったものだ。
しかし、911以降の厳しい情勢のなかでも、何をトチ狂ったか艦内まで公開してくれる奇特な海軍がいる。今回も行く前は期待はまったくしておらず、小1時間もあれば回って降りてこられるだろうと思っていた。当初は公開はモンマスだけと言われていたし、その時点ではもちろん上甲板だけと信じていたのだ。ところが、(なし崩し的に?)他の2隻も公開ということになってしまい、しかもすべて艦内、艦橋まで公開という、2002年の国際観艦式以来?の大規模な外国艦艇公開となった。
外国艦では、ときどきこういうハプニングのようなことが起こる。防衛省のカウンターパート担当者の尽力もあるのだろうが、やはり各国海軍とも、外国まで来てしゃちほこばって見学者を追い返したくはないのだ。オーストラリアにもフランスにも、イギリスがやるんならうちらも負けてられない、みたいなところがある。ま、海自もときどきその時の現場判断で急に広報を始める時があるけど。そういう平和なエピソードがいいやね、ビンラディンさん、あなたの言い分にも一理はあるけれど、そろそろ本当に勘弁してやって下さいよ。

*1:モンマスは1685年の「モンマスの反乱」で知られる初代モンマス公の領地である