モンマスの搭載ヘリを見る

Blueforce2007-10-26

そろそろ艦橋を降りなければならない。ざっと左舷ウイングから後方を一瞥して順路である右舷へ向かう。
左舷に見えるのはオーストラリア海軍のフリゲイト、パースと猿島。小柄なフランス海軍のヴァンデミエールはここからだとすっかり隠れてしまっている。
ウイングのフラット部分に設置されている筒状のものは、アメリカ海軍や海自の艦艇が装備するMk36・SRBOCに似たSea Gnat対空デコイだが、2004年よりMk251・Sirenに換装が進んでいるという資料もあるので、当艦のものもこのサイレンかもしれない。

右舷側ウイングから後方を望む。目の前に置かれているのは、前回の外部装備紹介編で触れたSCOT 1Cのアンテナ。ここで見学順路を最後にチェックして回る自衛官の方が追いついて、どんどん先に進む・・・後もう1カ所、見るべき大事なところが残っている、ここで降ろされたらかなわん、と先を急ぐ。

というわけで、艦尾ヘリ甲板にやって来ました。公開されている部分で艦橋に次ぐ重要パートがここ。当然落とすわけにはいかない。

後甲板に駐機する新鋭哨戒ヘリ、EH101・マーリンHM.1(シリアルZH840)。コーンウォール州のRNAS(Royal Navy Air Station)クルドローズをホームベースとする829Naval Air sqの分遣隊であるモンマスフライトに所属する機体である。
マーリンHM.1(モデル名EH101)はイギリスのウエストランド社・イタリアのアグスタ社が共同開発した汎用中形ヘリコプターで、1987年10月9日の初飛行以来、対潜・輸送・救難形など各国で多彩な用途のバリエーションが就役している。有名なところでは、アメリ海兵隊において次期大統領専用機、"マリーン・ワン"としての採用が決まっているほか、海自でも次期掃海・輸送用ヘリとして現用のMH-53Eシードラゴンを置き換えるべく導入が進んでおり、またこれとは別枠で次期南極観測船の建造に合わせて現行のS-61に代わる艦載機としての導入も予定されているほか、あまり知られていないが唯一の民間形として日本の警視庁でも1機を運用している(全然知りませんでした ごつさんからの受け売りです・・・)。
マーリンHM.1はEH101の軍用(対潜)形におけるベーシックモデルとして、1998年12月よりデリバリーが開始され、2003年までに44機が引き渡された。
機首下面の大きな円形の膨らみは同機の主要任務の一つである対水上捜索用のレーダー、BAEシステムズ製のブルーケストレル

エンジンはロールスロイス・チュルボメカRTM322 02/8(2,263shp)を3基搭載しており、最大離陸重量は14,600kgと、H-60系列のベーシック装備であるT700-GE-700(1,560shp)双発・最大離陸重量11,113kgに比べてかなり大形で、事実こういった艦上で見ると相対的にものすごく大きく見えるが、シルエットはちょっとシーキングの面影を残している(メーカーは全然違うが)気も・・・
メインローターは5翅で、回転直径は18.6m、もちろん折り畳み式。

正面から見たところ。機首のエンブレムは、パイロットのスーツに着けられていた829sqのパッチから見るに部隊マークとは違うようだが、ちょっとジャパニメーションの影響が見られなくもない、私的には好感の持てるデザイン。意外にワイパーのアームが太いのも気になるが、改めて見ればロクマル系もこんなものか。前脚を固定しているのはいわゆるトゥバーレスという前脚ホイールに取り付いて浮かせた状態で滑走させる器具だが、まるでカイゼル髭のように見えるのがご愛敬。

当日見学時は、メインとテイルの両ローターの整備中だった。右側の板状のものはパイロンで、スティングレイ航空魚雷を片側2発・全4発、またMk11対潜爆弾を搭載することができる。巡航速度280km/hという高速性能を意識してか、各脚は完全引き込み式で、主脚は張り出したスポンソンに収容される。

なお、当級および当ヘリコプターの着艦拘束装置は、アメリカ海軍を中心に海自も採用しているベアトラップ/RAST方式とは異なり、機体下部から飛び出した棒を(ここまでは同じだが)艦のデッキに開いている無数の蜂の巣状の格子(一つ上の写真でも機体真下に見える)に差し込むことによって固定する方式で、ベアトラップ/RASTのように固定用機器がそのまま動くわけではないため、このようにトゥバーレスで「載せて」しまって移送するような形態になっているものと思われる。しかし、ベアトラップ/RASTのワイヤーで引っ張るセンター出しはできそうにないし、どうやって各車輪を軸線の上に載せることができるのだろう?

今回の公開ではわかりにくい写真が撮れなかったので、2005年6月4日に名古屋港で公開されたニュージーランド海軍のアンザック級フリゲイト(今回公開されたオーストラリア海軍のアンザック級、パースと姉妹艦になる)、テ・マナHMNZS Te Mana F111のヘリ甲板を俯瞰したアングルでご覧頂こう。搭載機、SH-2Gシースプライト(NZ3601)の尾部付近の甲板にこの格子が見える。

ハンガーは1機のみ収容可能で、左舷側の側面が垂直な壁になっているのに対し、右舷側は段がついており、このように非対称な造りとなっている。

時鐘は右舷側ヘリ甲板建屋の縁の位置にある。

移送用のレールが続いているハンガー内部。壁面を取り囲むようにギャラリーのフロアがあり、長期の航海に備えてほとんど物置と化していた。正面の床に置かれているものはPR用のボード。

隣にメザシで泊まっているパースのヘリ格納庫。一応、グルッと回ってくるかな〜と思って渡ろうとしたら、「もう終わり」と制止されてしまった。ま、アンザック級は最悪ニュージーランド艦を見ているからいいけど、ヴァンデミエールは・・・ま、いいか。どうせ良く日本にやって来るんだし。しかし、かつては英車乗りだったが、現在はフラ車乗りの私としては、ここでフランス艦にまったく乗らないのもどうかと・・・

退艦する頃には、一般見学客はほとんどいなくなっていた。結局、2時間かけて見られたのは1隻のみ、まあ私の場合、1イベントで1隻、というか事実上その1隻の艦橋のみが見学対象なので、悔いはない。これが、艦橋ハンターの宿命だ。こうやって、機会があるごとに一隻一隻・・・知見と見聞を広めるのが、私のささやかな楽しみなのです。

というわけで、最後の最後に我が自衛艦、あすかとまきなみを。どうしても外国艦公開だと分が悪いが(というかout of 眼中というか・・・)、ホストシップの大任、お疲れさまでした。

Viva! ジョンブル魂! Glory to Her majesty's ship!