韓流貴公子、忠武公李舜臣見参!

Blueforce2007-12-21

12月19日、韓国海軍のミサイル駆逐艦、忠武公李舜臣(チュンムゴン・イスンシン)DDH-975と補給艦、華川(ホワチョン)AOE-59が横須賀に寄港した。
今回の寄港は例年開催される同国海軍の世界一周ツアーの帰途、最後の寄港地として立ち寄ったもので、同国海軍艦艇の訪日は今回で13回目、近年は毎年の寄港となっているので特に珍客でもないが、私の好きなKDX-2、しかもネームシップの忠武公李舜臣だというので、入港は日程の関係上無理だったが出港を撮影してきた。
韓国海軍は長らく骨董品ともいえるギアリング級など米軍艦艇の中古品が主力だった2流沿岸海軍から、自国建造の習作ともいえるウルサン級フリゲイトの大量建造を経て、広開土大王(クァンゲトテワン)級3隻に始まる新世代のKDXシリーズ*1など大軍拡中。忠武公李舜臣は、ポイントディフェンスの短射程ミサイルしか装備していないKDX-1、広開土大王級に対して、エリアディフェンス艦としてスタンダード艦対空ミサイルを装備した韓国海軍初のミサイル艦で、6隻が建造されたKDX-2シリーズのネームシップ。この後に建造されたKDX-3、世宗大王(セジョンテワン)級はイージス艦となり、韓国はアメリカ、日本、スペイン、ノルウェーに続き世界で5番目のイージス艦保有国となる。
なお、同級は今回来日の忠武公李舜臣もすでに佐世保には寄港の実績があるほか、3番艦の大祚栄(テジョヨン)が2006年9月に横須賀に寄港し、一般公開も実施している。要目紹介、恒例装備品チェックをはじめ当時の模様は当日記でも紹介しているので、併せてご覧下さい。

出港は1000とのことで、自宅出発は0830。天気はご覧のように晴朗なれど、本日は逆にあまり晴れ過ぎても困るんだよなあ・・・お!すでに行く先には沖留めの自衛艦群が何隻か見えているぞ・・・さあ、いっちょやったるで〜!

というわけで、本題のお客様お帰りの前に、沖の錨地に碇泊中のミサイル護衛艦きりしま(第1護衛隊群第61護衛隊・横須賀)を。錨地で錨を降ろして泊まっているフネは、潮の流れて向きがクルクル変わる。きりしまもこんな重厚な艦容をして、見ているうちに姿が変わるのが面白い。韓国艦隊もド順光とは言いませんが、この位の光線状態で撮影できればいいのだが・・・

戦争に負けて、本港である区域を全部米軍に取られてしまった我が日本海軍?は、その対岸である吉倉地区*2の2本の桟橋しか大型艦の接岸できる岸壁がない。通常でも吉倉地区が母港の自衛艦全隻の接岸は不可能なのに、外国からお客様が来たりすると手狭な我が家はさらにいる場所がなく(吉倉を見るとドラえもんの重力ペンキの話を思い出すのは私だけでしょうか・・・)、先日インド洋から帰ってきたばかりの補給艦、ときわAOE423などは、いつ見てもほとんど沖にいる。まあ、イージス艦をあまり目に触れない沖に出すのは、先日の中国海軍の横須賀訪問・見学でモメたように保安対策もあるのかも知れないが、一応は同盟国だし、同様にイージス艦を取得した韓国海軍の目から隠す必要はまったくないだろう。

0950過ぎ、まずホストシップ、護衛艦おおなみDD111(第1護衛隊群第5護衛隊・横須賀)が出港。吉倉出港の場合、針路はおおよそ最初030、横須賀港入口のブイの所で若干取舵に振って006、その後045、さらに面舵に取って090となる。ほとんど真北に向かってくるこの位置では順光側で、我々向きの右舷側に光が回っているが・・・だいたい、陸上では雲一つない晴天で空気も澄んでいる印象だったのだが、いざ海に出てみると、ご覧のように私がフネを撮るときの定番、モヤがかかりまくりのコンディションに。なんでこうなるんだ〜!

まともに艦影が撮れる位置まで来ると、このようにモロ逆光となってしまうorz わかっていたことだが、モヤとの二重苦でとてもお見せできるようなものには・・・
外国艦艇来航の通例として、出港後は沖合にて自衛艦と親善訓練を実施することになっている。先日の中国海軍の時は異例中の異例で、さっさと見送って帰ってきてしまったが、今回は常連客の韓国海軍なのでもちろん実施。

沖留めの護衛艦むらさめ(第1護衛隊群第1護衛隊・横須賀)を横目に見て港外に出て行くおおなみ。

韓国艦隊は1000過ぎ、まず補給艦の華川が出港。なお、華川は2004年秋、広開土大王級の3番艦、楊萬春(ヤンマンチュン)DDH-973に随伴して晴海に寄港したことがあり、その時の記録を本隊で掲載しているので、こちらも併せて参照のこと。

1020、いよいよ忠武公李舜臣が姿を現した。まだまだ距離で言えば1,000ヤード近くある所だが、順光で撮れるのはこの辺りだけ・・・あ〜もっといい機材があればな〜!(機材のせいにしないの!)

港外に出たところで、見る見るうちにおおなみと同じようにほどんど真っ黒けに・・・
横須賀港の撮影ポイントは、基本的にすべて北から南を望むように位置しており、どこに陣取っても逆光になってしまうのだ。わかってはいたことだが、このポジションここまでひどいとは・・・だから、今回も冒険せずに大人しくいつものポイントから撮ればいいのだが、あそこは両側がうるさいしなんだか素人くさいし(素人だろ!)、なにより入港ならまだしも出港ではケツ追いになってしまう。こちとら何でもパシャパシャ撮れりゃ満足なのとは違うんだ、ケツ追いの写真など撮って悦に入っているわけにはいかない。なんとかして・・・と賭けたのが今回の撮影ポイント。まあ光線的には失敗だが、KDX-2を岸壁でしか見たことのない私としては、この姿が撮れただけで感無量です。しかもネームシップ・・・!

ここで針路90度、真東に変針。若干左舷に傾いたダイナミックな姿・・・ウヒョ〜李舜臣様カッコイイ〜!これで海バックで順光だったら・・・それにしても、横須賀にあんなに煙吐く煙突あったか?

艦橋アップ。
マストに掲げられた信号旗は、右舷が上からホテル(H)、リマ(L)、エコー(E)、フォックストロット(F)と読め、こちらが同艦のコールサイン。左舷が回答旗とホテル(H)、それと別におなじみの「ご安航を祈る」という意味の「UW」、すなわち自衛艦が掲げたユニフォーム(U)、ウイスキー(W)に、返信の意味(貴殿のご協力カムサニダ!こちらからもご安航を祈る!)である数字旗の1を一番下に追加した「UW1」を掲出している。

今回ラスト〜!完全シルエットになってしまった。この時点で1030、実は今回も、当然東京湾フェリーでの撮影作戦を考えたのだが、久里浜・金谷発両便とも1100発で、海図を眺めながら何度もシミュレーションを行った結果、ちょっと遅いのではないかと思って諦めたのだ。
東京湾巨大船情報では、その名の通り巨大船(定義は全長200m以上の船舶)でないと通航の時刻は表示されない。よって駆逐艦サイズの艦艇はまったく時刻の把握は不可能なのだが、今回のように外国艦艇の来航の場合はプレスリリースに入出港時刻の公表があり、しかもリーチのある晴海と違って浦賀水道航路までの距離が短い横須賀、かなりの精度で時刻を推測することができる。1000に出港すれば、出港に5分ほど、そこから浦賀水道航路に乗るまで10分、東京湾フェリー航路との交点までは恐らく40分位ほど・・・1100出港のフェリーでは恐らく交点に到着するのは遅過ぎて、多分韓国艦隊は遠く沖の方に去ってしまっているだろう。全長332mの空母なら、ちょっと外してもそこそこの大きさに写るのだが、その半分ほどの駆逐艦では豆粒ほどにしかならないはずだ、リスクが高過ぎるというわけで、今回はフェリーは諦めてこの場所からの撮影に決めたのだ。
しかし、1000出港といっても、今回のように補給艦を先に行かせる場合、飛行機のように秒単位で動けるわけではないので、実際李舜臣が離岸をしたのは1020前、結果論だがここまで遅れてしまえば、逆に東京湾フェリーからだとまた衝突コースだった可能性が・・・う〜ん、当たるも八卦、当たらぬも八卦のフネ撮りよ・・・

最後に出港したのはもう1隻のホストシップ、護衛艦たかなみDD110(第1護衛隊群第5護衛隊・横須賀)。

先程のおおなみと同じように沖留めのむらさめと並んだたかなみ。むらさめ型たかなみ型ネームシップ揃い踏みである。4,400t型としてハルナンバーも101と改められてデビューしたむらさめと、基本的に同型の拡大形であるたかなみ型はシルエットではほとんど同一、目立つのは前甲板の砲が76mmのOTOブレダコンパクト砲からメーカーは同じながら5インチへと大形化されていること位である。汎用護衛艦がまず横須賀の第1護衛隊群に配備されるのは昔からの伝統。

さてお客さんが帰ったら、沖留めの艦艇群も帰宅の支度を始めたようだ。全艦抜錨!錨を巻き上げると、錨鎖の洗浄水が艦首からジャバジャバと吹き出した。この洗浄は長く、十数分も続く。そして、出港ラッパが聞こえてきた。う〜ん、ここも家の中みたいなもんだけど、こういう移動でもやっぱり出港ラッパは鳴らすもんなんすね・・・しかし、この位置からではすでに(所定では)入港準備・入港ラッパを鳴らす錨地まで2,500mの距離をすでに切っている。入港ラッパはいつ鳴らすのかな?

続いて、ときわ、さらに陸地寄りの錨地に泊まっていたむらさめからも次々と出港ラッパが聞こえてきた。こんな海の上で、三方からラッパの音が聞こえてくるなんて・・・しかも、なんか足下からも聞こえてきたぞ!?おっとこれは同行の女史の携帯の着メロだwwww しかし、俄に周囲が慌ただしく、ただならぬ雰囲気になってきた。錨鎖を巻き上げるガンガンいう音、洗浄水の放水、巨艦が身を震わせるような空気がみているこちらにも伝わってくる。そしてついに、背後に泊まっていたときわが、いつの間にか動き出して真横からヌッと飛び出してきた!うわノーマークだ!と思ったら、オイずいぶん小さくなっちゃったなwwwww
いやいや違います。これは「ときわ」と書いてあるけれど、搭載の内火艇。一足先に連絡のために吉倉へ向かうようだ。

なんてやっていたら、本体の方もいつの間にか動き出していた! 突然死角から真横に飛び出してきて、その距離は恐らく200mを切っていただろう。なかなかの大迫力。

きりしまの碇泊位置からでは、ほとんど回頭の自由は利かず、バウスラスターなど備えていない護衛艦では一度港外に出て頭を回すしかない。そうなるとグルッと回り込んで、行きはかなり目の前を通ってくれた後、今度はときわのように順光で帰って来てくれるのでは?と期待したのだが、左舷前進・右舷後進をかけてその場回頭を行ってしまった。こんなデカいイージス艦が、また小回りの利くこと・・・
これにて、今回の韓国艦隊・忠武公李舜臣撮影作戦は終了。しかし、すぐに帰ることはできず、さっきまで巨艦に囲まれていたのに誰もいなくなってしまった海面を前に、しばらくの待ち時間を我慢することになる。さて、我々はどこにいたのでしょう? この場所については、後日当日記で公開予定。ご期待下さい。

*1:KDXはKorean Destroyer eXperimentalの略 Xは直訳すれば試験的という意味だが、日本でもFX―次期主力戦闘機―などで使われるように、そのアルファベットのイメージになぞらえて「未知の・期待の新形」のように使われることが多く、すでに1番艦が就役してから5年にもなる忠武公李舜臣級にいつまでもつけているのはおかしく、実際はKD-2なのだが、さらに就役年次が古い広開土大王級も未だにKDX-1と呼ばれる事が多く、慣例的にXが不可分のようになってしまっているので、不正確ではあるが当日記でもKDXで統一させて頂く なお当シリーズはカワサキの2ストエンデューロ車シリーズとは何の関係もないwwww

*2:ひと山越えた海上自衛隊司令部のある船越地区も自衛艦の母港となっているが、こちらはいわゆる機動部隊である護衛艦隊の艦船ではなく、地方隊艦艇が主体となるエリアとなる