護衛艦いずも初公試に出る

2014年9月22日、ジャパン マリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で建設中のいずも型ヘリコプター搭載護衛艦ネームシップ、いずもJS Izumo DDH183の初めてとなる公式試運転が実施された。初めて自力で外洋に出たその姿を、世界で初めて(?)目撃してきたので、ご覧頂きたい。

2012年1月27日起工、2013年8月6日進水という日程で建造が進められている22DDHと呼ばれたいずもであるが、前級のひゅうが型が2番艦のいせも含め起工から進水まで約1年3カ月、進水から就役まで約1年7カ月のスケジュールなのに対し、起工から進水まで約1年6カ月、進水から就役までは予定では約1年7カ月と、起工〜進水が排水量相応?に若干長くなっている。しかし、ひゅうが・いせがそれぞれ8月下旬の進水で翌年7月には公試を始めていたのに対し(ひゅうがは2008年7月22日)、いずもは7月にはまったく音沙汰がなく、8月には…と思っていたのだがこちらもそのまま通過してしまった。いくらなんでも、サイズが大きくなったのに行程が2カ月送りとは、もちろん当初予定のものではないだろう。あまり詮索は避けるがw

というわけで、ちょうど2カ月遅れの同日となった、気持ちいい秋の一日に、ついに公試出動となったわけである。

まずは前座(失礼!)、たかとり型巡視船のネームシップ、たかとりPM89が目の前を通って行く。

日曜と秋分の日に挟まれた飛び石の平日であったが、さすがに月曜日我が社の動きも活発で、まずはやまゆきJS Yamayuki DD129が出港して行った。

続いてはゆうぎりJS Yuugiri DD153が。

さてかんじんのずもいーである。出港は事前の予定より1時間近く遅れ、ひょっとしたら取りやめになるのでは…と恐れおののいたが、かなり港内でもたついた挙げ句、なんとか行き足がついてきた。両脇にタグを従えての航行となる。

しかし、この姿、まだ世界中の誰も見たことのない、そう造船所の人間も、海幕長も見たことがないのだ。まさに歴史の証人!ひゅうがは帰りの時であったから、今度こそは掛け値なしの目撃者第一号である。

気になるひゅうが型との比較であるが、一見変わらないようにも見えるが、約50m伸びてアイランドの大きさはほとんど変わらないため、実物はかなりバランスが良くなっている(あくまでも見た目のですよ)。最初出港時のほぼ真横の姿を超遠距離で見た時は、ワスプ級に似ているのでは…長距離で視程が悪かったら見間違うのでは…と思ったほど。実際ワスプ級とは全長の差9mに迫った。

また、アイランドの側面は、ひゅうがではまったく段差がつかない面一で船体につながっているのに対し、段差がついてキャットウオークも設けられたため、見た目ここにスジが入ってひゅうが型のようなノッペリ感がなくなっている。しかし当型で初の装備となる舷側エレベータは、ほとんど長手方向に対して直角に設けられた張り出しがすごい…受ける風の抵抗も相当なものになるのではないだろうか。

また、全長が200mを超えたことで、東京湾の巨大船情報に通航予定が出るようになり、フェリーでの迎撃も予定が立てられるようになった。今回の初公試は予定でもあまり近づかない時間であったが、大幅に遅れたうえにさらにフェリーダイヤとはかぶらない時間になってしまい、一か八かで乗ったフェリー組には残念な結果となってしまったようだが。

送りの姿は、これが一番強烈な印象であったが、特に左舷の斜め後ろから見たところが、最初キエフ級にも見えて…いやいやそんなはずはとしばらく見続けていたら、なんか近未来っぽいというか、アニメっぽい(うまく説明できないが)フォルムのような気がする。ひゅうがとそれほど大きく変わっているわけでもないのだが…全幅が5m程度広がっているのも見た目に効いているのだろう。さらに腰が低い、どっしりした印象になった。まだ就役前のいち民間船であるので、自衛艦旗が掲げられていないのに注目。この姿が撮れるのもわずかの間だけである。

というわけで、いずも君は2カ月の工程遅れを取り戻すべく、泊まりの公試で初めて浦賀水道航路を通って沖に出て行った。就役は2015年3月予定、ここからは突貫作業になるのかもしれないがご安全に。

締めはこれまたオマケといっては失礼だが、海洋観測艦わかさJS Wakasa AGS5104のきれいな姿を。