シンガポール海軍ステッドファスト来航
本日、シンガポール海軍のフリゲイト、ステッドファストRSS Steadfast 70が来航した。
ステッドファストは2007年に1番艦が就役したフォーミダブルFormidable級の3番艦で、本年2月5日に就役したまさに最新鋭艦だが、本年7月の環太平洋合同演習、リムパック2008にも参加しており、その帰途の訪日と思われる。もちろん、当艦は言うまでもなくクラス自体が初来日となる本年有数の大物だ。
というわけで、今回もどこでお迎えするかで悩むわけだが、やはりこの季節は(基本逆光とはいえ)意外に光線状態がいいので、2週連続で赤灯行き決定。天気もいいようで(もっともあまり良過ぎても逆に真っ黒になる危惧があるわけだが)、前夜終電間際まで六本木青猫会でワインをしこたま飲んでいたにもかかわらず、睡眠2時間半でお目目パッチリ! 行くで〜ステルス迎撃戦!
0430起床で道中同行の方をピックアップ、前回のようなギリギリの轍を踏まぬよう、出港40分前の0650に村本さんの受付に出頭した。しかし、まさにお盆休みのシーズン中、すでに駐車場はいっぱいで若干遠くのコインパーキングに一往復・・・今日も朝から狂ったような暑さだ。入港予定時刻は1100なので、0830発の便で行って1200の便で帰ってこられるコースだが、この朝の便、土日は0730に繰り上がってしまう。無駄に1時間追加で、結局島流しの時間は前回のエセックス編と変わらず4時間強となる。クーラーボックスを持ってきたので、水分は前回1リットルでは若干不足気味だったこともあり2リットルのペットボトルを購入。機材を含め、荷物が尋常でない重さ・・・
本日は、船プロパーの方は私も含めて計6人の参加となった。フェリー例会と同様、会を追うごとに人数も増えて来て、いつも言っていることだが東京湾フェリーと村本海事から利用振興で表彰&優待券でも頂きたいところだwwww 今回は全員時間もたっぷりあり、余裕で乗船するも、船内はいよいよ超満員で居場所もない。いつも陣取る船尾のデッキも満員で、重い荷物を広げる場所もなく、通路に立ったままで到着を待つ・・・が!
なんか、また軍艦が沖に1隻いるんですけど。しかも、また日本のフネとは思えないシルエット・・・おいおいまたか〜!? 今日こそは、着いてからしばらくゆっくりできると思ったのに・・・しかし、それ以前に一体あれなんだ!? こちらはまだカメラを取り出して長玉をつける余裕はない。同行者の所まで行って、撮った画像を拡大して見る・・・タイプ23級だ!
困ったなあ・・・まるで村本の船の時刻を知っていてわざとやっているようだ。しかも、前回のエセックスよりも進行が早く、秒単位の争いっつ〜か、どうにも間に合いそうにない・・・不安げに(というか諦め顔で)浦賀水道航路の方を眺める船ヲタの皆さん。
まったく前回と同じ進行で、船は防波堤の各ポイントで本来の客層である釣り人を降ろし、遅々と進む。アカンね〜こりゃもう絶対間に合わないって。ま、タイプ23級ならいいか・・・
やっと赤灯が近づいてきた。しかし、なんかこの写真おかしくないですか?そう、いつもと防波堤の反対側を航行しているのだ。南風の時は防波堤の岸から外側を通るとのことである。しかし、そうすると上陸点の段差が高いんだコレ。
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結局、やはり前回よりも進行が早く、撮影ポイントに着いてセッティングをしたら艦は目の前に迫っていた。やはりタイプ23級、ケントHMS Kent F78のようである。
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現在イギリス海軍の水上艦で中核を占めるタイプ23級フリゲイトの14番艦で、2000年就役。昨年10月にPSI訓練の後横須賀新港に来航した6番艦モンマスHMS Monmouth F235と同クラスで、最近来航の回数は増えてきているので飛び上がって喜ぶほどの珍客でもないが(^^;)、嬉しいボーナスには違いない。同艦は聞く所によるとウラジオストクで開催予定だった国際観艦式?のようなもの?に列席するために極東に来たそうで、数日前に沖縄ホワイトビーチに入港した姿が確認されているが(実はレーガンが佐世保を出港した8月1日にはフランス海軍のフリゲイト、ヴァンデミール FS Vendeiaire F734が入港してきたのだが、同艦もウラジオ訪問組らしい)、横須賀にも入るとは・・・
もちろん、海自プレスリリースには発表がなかったから外交儀礼として海自基地に入るわけではない。朝鮮戦争時に定められた、「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」に基づいての米軍基地への寄港となる。軍艦も規則や儀礼で動くから、その行動を理解するのは大変だ。休戦中の朝鮮戦争を戦う国連軍の戦力として、作戦行動の一環で寄港するわけだから、国連軍の一員ではない海自はもちろんホストシップも派出しないし、歓迎行事も行わない。隣の家に入ってきた関係ないお客なわけである。
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続いて、アメリカ海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦、マッキャンベルUSS Mccampbell DDG-85が入港。
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お盆のど真ん中でピクリとも動く気配のない海自にはまったく期待できないが、佐世保に続いて本命の他にもいろいろと余録が・・・しかし、フライトIIAを改めて後ろから見ると、ヘリ格(これがまたギリギリらしいが)に比べずいぶん横幅の余裕があるように感じられる。
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そして、0920、観音崎の角から軍艦らしきシルエットが姿を現した。本命はお迎えの準備万端、さっさと来いや〜!と思っていたら・・・あれ? あれれれ!? また早めに変針しやがった!
そう、恐れていたショートカットコースで入ってきたのだ。ああ・・・そうするとずっと逆光の右舷しか撮れない・・・
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フォーミダブルFormidable級フリゲイトは、1972年より就役の旧形のミサイル艇、シーウルフ級の代替として2007年より建造が続けられているもので、創設以来比較的小形のコルベットやミサイル艇、パトロール艇が多かったシンガポール海軍が初めて建造した大形の戦闘艦である。全長114m、満載排水量3,200tは日本の「はつゆき」型に相当するサイズ。意欲的なステルスデザインで世界の海軍に衝撃を与えたフランス海軍のラファイエット級フリゲイトを原型としている。ラファイエット級は台湾海軍でも康定級として採用され、さらにこの2タイプを若干拡大再設計してサウジアラビア海軍でもアル・リヤド級として採用されているが、フォーミダブル級はこのアル・リヤド級をベースに、小形に設計を改めたものである。ラファイエット級に比べればマストなど10年間の技術の進歩を反映していっそうのステルスデザインとなっているのがわかるほど、形態は異なる。
建造は1番艦がフランス・ロリアンのDCNS(Direction des Constructions Navales Services・旧DCN)で行われ、2番艦以降はシンガポールのST Engineeringで最終組立を行った。
ちなみに、クラス名であるフォーミダブルであるが、言うまでもなくイギリス海軍で戦列艦―戦艦―空母に名付けられた伝統の艦名で、当級は以下すべで形容詞の艦名が付けられている。形容詞艦名といえばイギリス海軍のお家芸で、アメリカにはほとんど例がなく、しかも英語の形容詞とは、いかにイギリス連邦の一員とはいえ、華僑が人口の大部分を占めるシンガポールには若干違和感がないわけでもない。
しかし、ご存じのように建国40年余、東京23区ほどの面積しかないこの国に、名峰や大河、古戦場、都市があるわけでなく(てゆーかシンガポール自体が都市なので)、歴史上の偉人もいないとなれば、艦名ネタに困るのは明白。現在までに在籍した、機雷戦艦艇を除くほとんどの艦が、このイギリス流の一般名詞・形容詞艦名で名付けられている。そのうち空母でも造ったらやっぱりマーライオンとかになるんだろうかw
ただ、意外だったのが、ステッドファストもいかにも巡洋艦辺りにある名前だと思っていたのだが、掃海艦だったようである。ちなみにステッドファストの1隻前の2番艦、イントレピッドRSS Intrepid 69はアメリカ海軍にて数少ない形容詞名の艦名を持つエセックス級空母の3番艦、CV-11*1に名付けられている。
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推進方式は2軸・4基のMTU 20V8000M90ディーゼルエンジンを巡航・ブーストで使い分けるCODADなる世にも珍しい方式、1基あたりの出力は8200kW(1万1,000SHP)で、巡航18ノット、最大速力は27ktとのことである。さすがオールディーゼル好きのフランス海軍、原形のラファイエット級もディーゼルだが、あちらはエンジンがさすがにフランス製のセムト・ピールスティックだ。もっとも当級は出力でラファイエット級の半分強に過ぎないが、いくら若干小形とはいえ最大速力で2ノット優速なのは若干計算が合わないような気も・・・
対空ミサイルはラファイエット級・康定級がクロタルを装備する*2のに対し、最新のアスター15(短射程形)/30(長射程形)を前甲板のSylverA50 VLS(32セル)に収容する。フランス海軍の原子力空母シャルル ド・ゴールCharles de Gaulleに搭載されているものとほぼ同じ構成・システムで、シースキミングミサイルに対する迎撃もこのミサイルで行うため、一般的なCIWS類は装備していない。
対艦ミサイルはラファイエットを初め各バージョンはMM40エグゾセを搭載するが、当級はハープーンに変更されている。収納は従来のMk1414連装キャニスターで、艦橋構造物後ろの舷側に壁面でカバーした内側に設置されている(ために今回の写真ではまったく見えない)。魚雷は同じスペースの後方にEurotorp A244/S Mod.3短魚雷の3連装発射管を備える。メインマスト部直前の船体側面にある四角い筋彫りが開口部。
砲は76mmの乙女ララ!?じゃなかったOTOメララ62口径スーパーラピッド砲だが、当然ステルスシールドつきのタイプである。射撃指揮はEADS Gunfire Control Systemとのことで、露天艦橋にあるシーアーチャー風のターレット状のものと思われる。
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3次元対空捜索レーダーはタレスのヘラクレス・フェフィズドアレイレーダーを艦橋上部に装備、上部をカットした四角錐形状の回転式レドームの中にプレイナーアレイ(フェイズドアレイだから当然だがw)のレーダーを収納している。"Multi function"とのことで、アスターの誘導・管制もこのレーダーで行うようで、また水上目標の追跡も可能とのことである。
航海・水上レーダーはTerma ElectronicのScanter2001(メインマスト中段前方)、ESMはラファエルのC-PEARL-M、デコイはSagem Deense Securite New Generation Dagaie Systemを前部に2(艦橋前部両脇に見える)、後部に1基装備。ソナーはVDSタイプのEDO Model980アクティブ/パッシブ低周波曳航ソナー(ALOFTS)を装備するが、対潜艦ではないためか?ハルソナーは装備していない。ヤードの信号旗は左舷の4連のものが同艦のコールサインで上から「S」「6」「K」「K」、右舷のものが先週のエセックスと同じくパイロット乗船を表す回答旗+「H」、横須賀港に向かっていることを表す第1代表旗+「P」を掲げる。こればかりは宇宙船のような超ステルス艦でも同じ。
また、ちょっと気になったのが、艦橋のガラスが妙に色がついていて偏光ガラスっぽく見えることで、プラウラーのキャノピーが自機の出す妨害電波でエビエータがやられてしまわないように金色の金属コーティングを施しているのに似て、なんか電波を反射する材質でコーティングされているのではないか、という気も。かように先進的な艦であるので、シンガポール海軍もあまりおおっぴらに見せたくないらしく、入港時の報道公開も乗艦しての取材はいっさい行わなかったそうである。
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左回頭して横須賀港内に向かう。このアングルもまた強烈っつ〜か、オモチャのようにも見えるし・・・搭載ヘリはSH-60B規格のシコルスキーS-70Bだが、今回の来航時にはご覧のように搭載していなかった。なんでも、「まだ買ってない」!?そうで、米海軍のHSL-47所属のSH-60を使用して運用試験はやっているのだが、自前のヘリを搭載するのはちょっと先になりそう。報道では2008年10月〜2010年にかけてフネの数に合わせて6機を調達するとのことである。
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予定よりかなり早く1020、吉倉桟橋、お客さん用のヤンキー2ことY2バースに向かう。Y1には「あめ」型2隻、Y3にはご覧のように「たかなみ」「おおなみ」のなみコンビ、Y4にはすでに除籍されてしまった「しらせ」が停泊している。なんか、お盆休みということもあってか、歓迎行事も小規模でひっそりとした親善訪問だったようである。しかし、8月15日の意味知らんわけでもないだろうに(てゆ〜か思いっきり当事者・・・)何もこの日に来なくても、という気も。
というわけで、上陸後2時間を経て、これにて本日の作戦終了〜。後はお迎えをゆるりと待ちましょう。本日は気温も35度に届こうかという酷暑ながら、海の上は渡る風も涼しく、東京の真ん中とはえらい違い。日陰に入れば涼しい位だ。
空と海はどこまでも青く・・・
昔の監視所の室内はどこまでも暗くwwww
今回初渡航のメンバーも多いので、あちこち探検などしながら(といっても10m四方くらいしかないのだが)、例によって業界裏話や悪口大会wなどで盛り上がっていたら、4時間もあっという間に経ってしまった。
1215過ぎ、皆さ〜ん、お迎えが来ましたよ〜 しかしまたこちら側につけられると、段差が大き過ぎて・・・左膝を若干壊しましたwwww 今回はクーラーバッグを持ってきたので、荷物の両が先週に比べてさらに多く、帰りまでに少しでも重量を減らしたい・・・と意識していたわけではなかったが、持参した2リットルのぺットボトルはほとんど空になっていた。
2週連続でお届けした赤灯珍客日記、お楽しみ頂けましたでしょうか。これからはどんどん光線的には厳しい季節に向かっていきますが、また大物が来れば狭いお立ち台の上はフネ屋さんで賑わうことでしょう。今回も同行の皆さん、暑い中お疲れさまでした。