護衛艦あたごを見学Part1

JDS Atago DDG177&Kirishima DDG174

さて皆さんお待ち兼ね、半月ぶりのカテゴリ「海軍」です。
横須賀市制100周年記念協賛行事として、米海軍・海自横須賀基地で一般公開が実施された。例年にはない時期のイレギュラーな公開で艦船ファンとしては嬉しいところでああるが、どうせ空母がいるわけでなし、当初はアメちゃんの方は公開艦もなしという予定だったので、海自だけなら面倒なので行かないつもりだったのだ。

だが、週末が近づくにつれて、どうも漏れ聞こえてくる品揃えに期待が・・・これは行かないわけにもいくまい、ということで1000起床。ダメだ〜!
ええ、もう昼前起床がデフォですよ、若くないんだから、それでオッケー!ダラダラと支度して、1100出発。それでも1時間半もあれば着くのだから、まあ問題ないない! 本日も当然オープン走行でノースピアの音響測定艦磯子16DDHを横目に見つつ、幸浦で降りたら八景島の駐車場渋滞で一帯は大変なことに!それをなんとか抜けて、今度は横須賀市街の祭りで大渋滞!もなんとかかわして、予定通り1230に現着。

「3度の飯より子供の・・・」オット危ない、「3度の飯よりアメリカ海軍」が生活信条の私としては、このような並列イベントだったら当然迷わずアメちゃんを選ぶ。大物がいれば海自など行かずに一日が終わるのも厭わないのだが、本日はちょっと事情が違った。まず、海自桟橋である吉倉に足を向ける。本日の米軍側は、ハーバーマスターのwestにジョン S.マッケインUSS John S.McCain DDG-56、eastはフィッツジェラルドUSS Fitzgerald, DDG-62が停泊中。ま、それはいいんですよ、それはね・・・

せっかくしばらくフネもヒコーキも忘れて高原ハイキングに勤しもうと思った私が、わざわざ横須賀まで来なければならなくなった元凶がこれだ! なんと、3月に就役したばかりの最新鋭イージスDDG、「あたご」型のネームシップである「あたご」DDG177が公開艦だという。2月のレーガン撮影ツアー長崎を訪れて就役前最後の姿を撮影して以来の再会であるが、舞鶴を母港とし第3護衛隊群に配属された艦船が横須賀を訪れるのは稀だし*1、就役後2カ月のしかもイージス艦が横須賀で一般公開!?どういうこっちゃねん!

もちろん(?)いくら嬉しい予想外といっても、自宅出発時点ではどうせサラリと上甲板だけの一般公開と信じて疑わない私である。こちとらイベントでワーワー騒ぎたいわけではないので、人だらけで資料用の写真が撮れなかったり、勉強にならないような催しには行く気にならんのだ。外国艦艇の来航ならともかく、自衛艦の上甲板だけなら正直わざわざでかける価値はない。強いて言えば、このマストだろうか・・・私、当初はこれだけで来たようなもんです。
軍艦のスタイリングに大きな影響を与えるメインマストは、長崎レポートでも述べたが、「あたご」型では海自の伝統であるいかにもRCSの大きそうなトラスマストからタイプシップアーレイ・バーク級に似たモノコックマストに替えられた。

取り付けられている装備に大きな変更はないが、「こんごう」型のトップにはNOLQ-2・ESMアンテナがついていたのに対して、「あたご」型では常識的なTACAN(恐らくURN-25)となっている。その下段にはトップから降ろされたNOLQ-2・ESMアンテナ、リング形状のIFF、SH-60とのデータリンクアンテナ(SQQ-28?)・・・

中段の前面にあるバー形状のアンテナはOPS-28E対水上レーダー、その右舷側下前方に同様の形態ながら小振りのOPS-20B航海レーダー、艦橋上部にスタンダード誘導用のSPG-62イルミネータ、側方にNOLQ-2・ECMアンテナ、その後方にあるレドームはスーパーバード衛星通信アンテナとなる。

乗艦後、ブリッジウイングから見るとこんな感じ。右側に見えるのがNOLQ-2のECMアンテナ。

なんと豪華な競演か、横須賀が母港の第1護衛隊群所属、「こんごう」型の2番艦「きりしま」DDG174とのメザシが実現。中央に肩身が狭そうに挟まっているのは「こんごう」型の一世代前、非イージス艦最後のミサイル護衛艦である「はたかぜ」型のネームシップ、「はたかぜ」DDG171。最近は公開時にこの配置で泊まっていることが多く、そのたびに「こんごう」型に比べて小さいのを実感させられるのだが、両脇をイージスで固められると、よりいっそうの小振りが目立つ。これも本隊や当分遣隊で何度も述べたことがあるのだが、「はたかぜ」型も基準排水量4,600tと、決して小さい艦ではないのだ。

「こんごう」型と比べると、マスト以外ではスーパーバードがブリッジウイングの横に張り出して設置されていたのがマスト付け根脇に移動、位置も高くなっているのがわかる。この他、目ぼしい変化といえば、艦橋の上にもう1層分の構造物が追加され、「こんごう」型で同位置に装備されていた射撃指揮装置2形23(81式―GFCS-2)が見あたらなくなっている。これが「あたご」型の大きな謎で、前部甲板の5インチ砲、Mk45Mod4の射撃指揮を行うFCSがなくては撃つことができないのだが、一説にはSPG-62が砲の射撃指揮を兼ねると言われている。本当かよ!? まあ、仕組み自体は同じ物だし、砲とミサイルを同時に撃つような局面はそうそうないか・・・・
メインマストを裏側から見る。確かに骨組みが出ていない、すべて外板が貼られた構造になっているのがわかる。他の写真と合わせて見て頂くとよくわかるのだが、SPY-1Dレーダーの後ろ2面が「あたご」型では「こんごう」型よりも1層分高くなっており、艦橋レベルまで上がってきているため、「こんごう」型では後方まで回り込んで旗甲板までつながっていたブリッジウイングが真横で終わってしまっている。このため、交通には難儀するのではないか(写真のように後ろから回り込んで階段を上がる)と思われるが、後述のようにオートマークのため以前のように人間が行ったり来たりするような必要はなく、特に問題はないと思われる。ただ、速力マークは自動になっても信号旗は人力で選択して揚げる必要があるのだが、SPY-1の装備位置が高くなったことにより、レーダー作動中に旗甲板に人が立ち入ることはできないと思われるのだが・・・その辺の疑問は帰ってから写真を眺めていて気がついたもので、今回聞くことはできなかった。

今回の吉倉在泊艦は、Y1から「おおなみ」DD111(第1護衛隊群第5護衛隊・横須賀)、「きりしま」DDG174(第1護衛隊群第61護衛隊・横須賀)、「はたかぜ」DDG171(第1護衛隊群第61護衛隊・横須賀)「あたご」DDG177(第3護衛隊群第63護衛隊・舞鶴)、Y2に事前応募制の募集対象青少年限定一般公開を実施していた潜水艦「たかしお」SS597(第2潜水隊群第4潜水隊)、Y3に「むらさめ」DD101(第1護衛隊群第1護衛隊・横須賀)、「あすか」ASE6102(開発隊群直轄・横須賀)、「たかなみ」DD110(第1護衛隊群第5護衛隊・横須賀)、Y4に「うらが」MST463(掃海隊群直轄・横須賀)。この品揃えをご覧になって頂ければ、舞鶴からやってきた「あたご」がいかに場違いな存在かおわかり頂けると思う。

ミサイル護衛艦ならではのスタンダードをかたどったロープ掛けのポストを横目に、いよいよ乗艦。ヘリ格納庫を新設したため、「こんごう」型と最大の相違点となった後甲板部が目の前に迫る。

3月就役の最新鋭イージス艦に横須賀で乗れるとは・・・ちなみにこの舷梯、後で解説しますが艦上に上げたらその上からドアを閉めて、完全に後部構造物に収納される構造になっている。いくらかでもステルス性を向上するための仕掛けと思われるが、見た目にもスマート。ちなみに、このドアを閉じた状態だと反対舷の

のようになる。

しかし、艦艇のRCS低減を妨げる物の中で無視できない存在の内火艇は、船体外部にそのまま搭載されている。この辺が保守的というか、重厚ではあるのだが、ステルス性が・・・

各部とも真新しくピッカピカの上甲板を、まず前へ。VLSの配置も「こんごう」型から変わったところで、以前は前8×4=32セル(実際は3セル分ミサイル再装填用のクレーン収納部となるので29セル)・後ろ8×8=64セル(同61セル)の合計96(90)セルだったのが、合計数は同じながら前と後ろが逆転し、前がタイコンデロガ級と同じフルサイズの64セルとなり、しかも前後とも再装填用クレーンを廃止したので6発分プラスとなり、総計正味の96セルとなった。艦橋構造物最下層の両側にはMk36・SRBOCチャフランチャーを装備する。

Mk15バルカン・ファランクスは当然光学照準装置を備えた最新のブロック1B、その上の衛星通信アンテナはレドームタイプに変更されている。

ちなみに、これが2001年8月の仙台石巻港で行われた横須賀地方隊体験航海に参加した際のきりしまの環境構造物。衛星通信アンテナがオリジナルの金ダライ、OE-82であることがわかる。

5インチ砲は「ごんごう」型のOTOブレダ製54口径からアーレイ・バーク級と同じ一般的なFMC製のMk45、しかも最新型の62口径Mod4に変更された。昨年9月に紹介した韓国海軍のKDX-2、忠武公李舜臣級ミサイル駆逐艦と同じ装備となったわけだが・・・

改めて54口径のOTOブレダと並ぶと砲身が長いこと!普通に撮ったらとても砲身の先っちょまで収まり切れません! シールド自体もずいぶん小振りになったのがはっきりわかる。ちなみに、アメリカ海軍ではスプルーアンス級から制式化され、すでに制式装備40年近い歴史を持つMk45だが、意外なことに海自では今回の「あたご」型が初の装備化となる。対空性能がMk45より優れるとされるMk42の装備にいつまでもこだわったためだが、Mk45もMod4で対空性能の向上が図られたとして、OTOブレダから乗り換えることになったもの。

そのMk42を前甲板に装備する「はたかぜ」と、同艦越しに見た「きりしま」の艦橋構造物。

砲・ミサイルと武装が集中する「はたかぜ」前甲板の後方に「きりしま」の艦橋が、まさに聳えるようにして控える。世界の現用艦艇でこれほど威圧感のあるフネが他にあるだろうか・・・ちなみに、かつては新鋭艦は首都防衛の要、横須賀の第1護衛隊群に真っ先に配備されるのが通例であったが、まさに冷戦終結時に就役が始まった「こんごう」型は、いわゆる驚異の西方シフトに伴って1番艦の「こんごう」は佐世保の第2護衛隊群に配備になり、1語群へは2番艦の「きりしま」が配備と、冷戦時には考えられなかった順番になっている。「あたご」型に至っては、とりあえず整備される2隻は「あたご」が舞鶴の3護群、2008年就役予定の2番艦「あしがら」は再び佐世保の2護群に配備予定で、横須賀には配備の予定はなく、「こんごう」型への弾道ミサイル迎撃能力付加改修においても、「きりしま」に対しては予定すらない。
名前の付け順がうまくなかったんだけど、「きりしま」が横須賀で、「あしがら」が佐世保ってのも、なんだかな〜。MDにヘリ要らないじゃん、「きりしま」にMD改修施して、「あしがら」と取っ替えません?

最近なにげにファンが多いことがわかった、「はたかぜ」のスタンダードSAM単装発射機、Mk13。今回も訓練弾を装填して展示されていた。

大サービス、上から見たところをもういっちょ!

さて、前甲板の最前部を折り返したところで、左舷側には長い行列ができていた。ここで誘導ははたかぜ―きりしま―おおなみとメザシを渡って行く因幡の白兎ルート(?)と、当艦の艦橋へ上るルートに別れているのだが、艦橋ルートは当然のごとく長い行列ができている・・・果たしてどの位の時間で艦橋まで上がることができるやら。
しかし、私が今日ここに来た理由といえば、あたごしかない。いつでも乗れるような横須賀配属艦に乗って回るよりは、あたご1本に絞って徹底取材を敢行するのが今私に課せられた任務、と分遣隊長に厳命されてきた。というわけで、「一日一隻」のモットーを実行すべく、艦橋への行列に並ぶ。

予想よりも全然早く、15分足らずで艦橋まで上がってきてしまった。しかし上甲板から5レベル上にあるイージス艦の艦橋に行くのはマジ大変・・・上っても上ってもまだ階段は続く。これが「ゆき」型なら2層も上ればすぐ艦橋なのだが・・・イージス艦の艦橋詰めの乗組員はさぞや足腰が鍛えられることだろう。
さて、いよいよ艦橋へ!

*1:「こんごう」型イージス護衛艦で、私が唯一1隻だけ見たことがないのが舞鶴・第3護衛隊群所属の「みょうこう」DDG-175